◆呼吸器内科 編
COPDや喘息など、発作性に苦痛を伴う呼吸器疾患に対して、専門クリニックは住宅地だけでなくオフィス街においても速やかに受診できる利便性に優れた立地選定が重要です。専門性を高めるうえで必要な医療機器の導入や検査内容、治療方針などを効果的に広報して広域からの集患を図るほか、順番予約・時間予約など待ち時間のストレスを軽減する受診しやすい体制を整備することが大切になります。
≪ポイント≫
・専門性をアピールする場合は、ターミナル駅周辺で人の流れが多く、広域からの集患が可能なエリアを選定
・比較的高い診療単価を設定できる診療科ゆえに、事業計画では提供する医療内容と単価設定、増加する来院数の読みが重要
・導入する医療機器は価格交渉をもとに慎重に選定し予算化する
① 経営戦略・立地選定
呼吸器内科での経営戦略と立地選定では、一般内科をメインとして間口を広げるか、呼吸器内科の専門性をアピールするかによって異なった戦略を立てることになります。
(1)一般内科をメインとする場合
一般内科をメインとする場合は、慢性疾患の定期受診患者さんの積み上げが、経営のベースになってきます。
慢性疾患患者さんの受診行動としては、自宅から近い医療機関がファーストチョイスとなることから、開業候補地での診療圏調査結果で患者予測数値がしっかりと出てこない限り、成功の確率は厳しくなると考えられます。また診療圏の設定も狭域な徒歩圏内となります。
慢性疾患患者さんの診療所選びの基準は、日常のちょっとした不調や不安にも相談できる、かかりつけ医ということです。ですから、医師と患者さんとの信頼関係がそのベースとなります。
新規開業の場合は、現在通院している医療機関に不満をもつ方や、健康診断などで要治療となった新規の患者さんをいかに取り込めるかということになります。医療過疎地でもない限り、こうした患者さんを獲得するには相当な期間を要することになります。事業を早期に軌道に乗せるためにも、落下傘開業は避け、現勤務先病院で定期通院されている患者さんに、継続してかかっていただけるエリアでの開業の検討が現実的であり賢明な選択といえます。
また、開業後も地域住民を対象に定期的な「健康教室」などを開催して、「疾病予防や慢性疾患との向き合い方」などの啓蒙活動に努めるなど、「かかりつけ医」機能を発揮して、地域住民を取り込んでいく継続的な工夫が必要と考えられます。
(2)呼吸器内科の専門性をアピールする場合
呼吸器内科の専門性をアピールした開業を検討する場合、ターミナル駅で人の流れが多く広域から集患が見込めるエリア、もしくは内科開業の一般的な診療圏(都市部では半径約1km)において、内科開業医のなかでも呼吸器内科の専門医が少ないエリアを選ぶことが必須となります。
COPDや喘息などの呼吸器疾患は発作性に苦しさを伴うことが多いことから、不調時に速やかに受診できる立地の利便性が特に重要になってきます。実際、私どもの開業支援実績では、人口ベースのある住宅地というより、人の集まり、人の流れがあるターミナル駅での開業で集患力を発揮しているケースが多く見受けられます。
当然ながら、専門領域が競合する診療所が診療圏内にないことや、「呼吸器内科」を強調する診療所名、標榜科目の上位表記などで集患効果を高めることは、専門性を打ち出すすべての診療科に共通する戦略です。
また、呼吸器の専門性を高めるうえで、呼吸機能検査機器、呼吸抵抗検査機器、呼気一酸化炭素濃度測定器、呼気一酸化窒素濃度測定器、各種感染症検査機器などの医療機器の導入は医療機能上必須となります。こうした専門性をアピールできる事項は、開院前の内覧会実施における、地域住民へのポスティングや新聞折込みチラシで、しっかりアピールするとともに、ホームページ上でも院内設備や治療内容などの呼吸器疾患治療の専門性をアピールすることが大切です。
呼吸器疾患の場合は、院内で検査を実施することが多いこともあり、受診の利便性と院内の診療体制を考慮すると、順番ないしは時間予約制で診療を行うことが望ましいと考えられます。
~株式会社日本医業総研 発行 診療所開業 ここで差がつく診療科別開業成功のポイント より~
★次回は 呼吸器内科の事業計画 を掲載予定です
<過去のブログ>
消化器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/8月更新分
循環器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/11月更新分