◆循環器内科 編
循環器内科で獲得したい高血圧症や不整脈、動脈硬化症、狭心症といった症状の患者さんは一般的な内科を含め地域内での競合は避けられません。高い専門性を実践するための高機能医療機器の導入、実施する検査を加味した診療単価の設定、さらに地域によっては高齢者に多い合併症への対応等が患者さん囲い込みのポイントになります。
≪ポイント≫
・一般内科をメインとする場合は、現勤務先患者さんを定期受診者として引き継げる条件下でのエリア選定が賢明
・高齢者に多い広域な合併症への対応も患者さん囲い込みに有効
・専門性を打ちだす場合、心エコーやホルダー心電図などの比較的点数の高い検査の実施が、診療単価を効果的に押し上げる
① 経営戦略・立地選定
循環器内科での経営戦略と立地選定では、一般内科をメインとして間口を広げるか、循環器内科の専門性をアピールするかによって異なった戦略を立てることになります。
(1)一般内科をメインとする場合
一般内科をメインとする場合は、慢性疾患の定期受診患者さんの積み上げが経営のベースになってきます。
慢性疾患患者さんの受診行動としては、自宅から近い医療機関がファーストチョイスとなることから、開業候補地での診療圏調査結果で患者予測数値がしっかりと出てこない限り、成功の確率は厳しくなると考えられます。また診療圏の設定も狭域な徒歩圏内となります。
慢性疾患患者さんの診療所選びの基準は、日常のちょっとした不調や不安にも相談できる、かかりつけ医ということです。ですから、医師との信頼関係の構築がそのベースとなります。新規開業の場合は、現在通院している医療機関に不満をもつ方や、健康診断などで要治療となった新規の患者さんをいかに取り込めるかということになります。医療過疎地でもない限り、こうした患者さんを獲得するには相当な期間を要することになります。事業を早期に軌道に乗せるためにも、落下傘開業は避け、現勤務先病院で定期通院されている患者さんに、継続してかかっていただけるエリアでの開業の検討が現実的であり賢明な選択といえます。
また、開業後も地域住民を対象に定期的な「健康教室」などを開催して、「疾病予防や慢性疾患との向き合い方」などについて情報配信するなど、「かかりつけ医」機能を発揮して、地域住民に受入れられる継続的な工夫が必要と考えます。
(2)循環器内科の専門性をアピールする場合
循環器内科の専門性をアピールした開業を検討する場合、内科開業の一般的な診療圏(都市部では半径約1km)において、内科開業医のうち循環器内科の専門医が少ないエリアを選ぶことが必要条件となります。
循環器内科の専門性をアピールするとしても、内視鏡をアピールする消化器内科と比べると、一般的には競合診療所が多いと思われますので、診療圏は一般内科と同じ基準で考えておく方が賢明です。
診療圏としてはそれほど広く期待することはできませんが、診療圏内に循環器内科の専門医が少ないエリアであれば、診療所名を「●●循環器内科クリニック」としたり、標榜科目の表記の最初を循環器内科とすることで、他の内科診療所との違いが明確になり、より専門性の高い治療を求める患者さんの集患に効果的です。専門領域が競合する診療所が診療圏内にないことや、標榜科目の表記などは、専門性を打ちだす他の診療科にも共通する定石の考え方です。
もちろん、循環器の専門性をうたう以上、心エコーやホルター心電図などの専門の医療機器を導入しなければなりません。しかし、循環器内科診療所で獲得したい高血圧症や不整脈、動脈硬化症、狭心症といった患者さんは、すでに他の医療機関に通院されているケースが多いことから、周知と集患には一定の期間を要することになります。そこで、開業の立ち上がりをスムーズにするためには、勤務先病院で診ている患者さんを継続的に診療できるエリアでの開業が望ましいという結論になります。
もし、そのようなエリアでの開業が難しく、落下傘開業を行う場合には、開院前の内覧会の開催告知において、地域住民の自宅へのポスティングや新聞折込みチラシなどに循環器内科の専門性を大きくアピールして、他の内科診療所との差別化を図ることが重要となります。また、循環器疾患を患う患者さんは、糖尿病や睡眠時無呼吸症候群など他の疾患を合併しているケースがありますから、高齢者に多い合併症への治療を合わせて行えることが患者さんの囲い込みに有効と考えられます。
~株式会社日本医業総研 発行 診療所開業 ここで差がつく診療科別開業成功のポイント より~
★次回は 循環器内科の事業計画 を掲載予定です
<過去のブログ>
消化器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/8月更新分