院長のためのクリニック労務 Q&A
~採用・労働契約編5~
Q:前の職場での勤務態度が知りたいが、前職照会はしてよいか?
A:可能ですが、個人情報保護法に抵触することもあるため、本人の同意を得ましょう。
あらかじめ本人の同意を得ないで個人情報を取り扱ってはならない
前職照会とは、応募者が前に勤務していたクリニックや病院などに電話やメールで問い合わせて在籍中の勤務状況などを調べることで、履歴書や職務経歴書などの内容に相違がないか、退職理由や退職した医療施設での勤怠や勤務状況に問題がなかったか、などを確認することをいいます。
こうした調査そのものは違法ではないとしても、個人情報保護法では、「あらかじめ本人の同意を得ないで個人情報を取り扱ってはならない」と定められています。
同意の取り方
従って、前職照会してよいかどうかについては、本人の同意を得ておく必要があります。同意の取り方としては、面接時に「当院では、皆さんの前のお勤め先に前職照会をすることがあります。差し支えありませんか?」と口頭で聞くか、もしくは面接時のアンケートで、「前職照会をしても(よい)(してほしくない)」のいずれかを選択してもらう方法などがあります。実際に前の勤務先に問い合わせするかどうかは別として、応募者が、「前職照会して構わない」と回答した場合、「前の勤務先で大きな問題はなかった」と判断する1つの指標になるでしょう。
あるクリニックで前職照会を「してほしくない」と回答してきた人がいたため、その理由を尋ねたところ、前の勤務先で院長との口論が絶えなかったことがわかりました。前職に関して気になる点(すぐに辞めている、人間関係悪化などの発言がある、など)のある応募者には、面接で「前のお勤め先で、何かありましたか?」と聞いてみるのもよいかもしれません。とっさの質問に対しては、ポロっと本音を話してしまうものです。
ただし、全員に必ず前職照会のことを聞くまでの必要性はないと考えられます。書面で確認する場合は全員を対象にしても構いませんが、面接で聞く場合は、特に気になる点がなければ割愛してもよいでしょう。
まとめ
1.前職照会とは、応募者が前に勤務していたクリニックや病院などに電話やメールで問い合わせて在籍中の勤務状況などを調べることをいう。
2.前職照会して構わないという応募者は、前の勤務先で大きな問題はなかったと判断する1つの指標になる。
3.前職照会をしてほしくないという応募者には、面接で「前のお勤め先で、何かありましたか?」と聞いてみるのもよい。ただし、気になる点がなければわざわざ聞く必要はないと考えられる。
書籍「院長のためのクリニック労務Q&A」(小社刊)より
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