継承開業で立ち上がりのリスクを軽減。組織の規定に従う勤務医より、現役を全うし、高い専門性を発揮できる開業医の道へ。

さいたま胃腸クリニック

前院長 - 先生

院長 篠崎 大 先生

2001年5月に浦和市、大宮市、与野市の旧3市の合併で誕生したさいたま市。2003年には政令指定都市に移行し、現在の市域は旧岩槻市も編入して関東圏域を牽引する中核都市を形成している。大半の都市で人口減少が見込まれるなか、さいたま市が緩やかな増加を続けているのは20歳代、30歳代の転入による社会増によるものとみられる。

市の経済・商業・交通の中心は、かつて見沼の水神を祀ったとされる永川神社の門前町、大宮区。合計13に及ぶ乗り入れ路線数は、東京駅に次ぐ全国第2位で、巨大ターミナル駅周辺は曜日・時間を問わず常に人で賑わっている。

大宮駅西口から徒歩4分、1Fに調剤薬局が入居する賃貸ビルの2Fにある消化器内科「竹並クリニック」は、開設から約3年半後の2021年3月に篠崎大医師に継承され、「さいたま胃腸クリニック」に生まれ変わった。駅近エリアゆえに、徒歩圏内のクリニックでほぼすべての診療科が網羅されており、内視鏡を強みとする消化器内科の競合も少なくない。あえてこの激戦区での継承開業を選んだ篠崎新院長の秀抜した伎倆発揮に期待がかかる。

外科医の視点で診察する内科医療

先生は大学卒業後から消化器外科医療に携わり、多くの業績を残されてきたわけですが、外科に進まれることは早くから決められていたのでしょうか。

外科への進路は学生時代から決めていました。当時はまだ現在のような薬がなく、良性の病気でも胃切除術を行うほどでした。このため、内科では治らないが、手術をすれば治るということが大きな魅力でした。もう一つは、外科医は一定の勉強をすれば内科領域もカバーできるということです。そうすると外科と内科の視点でより高い位置から病態を見られますし、治療のアプローチも広がります。

先生が臨床・研究ともに長年取り組んでこられた炎症性腸疾患(IBD)ですが、病院では外科外来で患者さんに内科治療をしてこられたということですか。

IBD治療の第一選択は内科的治療ですが、うまくコントロールできない場合や悪性化を伴う患者さんは外科が診ることになります。

現在のところ、消化器内科の先生方は、ESDやEMRといった内視鏡診療や、肝・胆・膵疾患に興味のある方が相対的に多く、IBDを専門とする先生はあまり多くおられません。このため、私は外科でありながら内科的治療の患者さんも診察してきました。

IBDは再燃期と寛解期を繰り返す慢性疾患と認識していますが、何を目標に、どのような診療に心がけていますか。

残念ながらIBDでは、まだ根本的に治る治療法はありません。したがって、何よりも優先すべきは患者さんが得ることのできるベネフィットです。それぞれ個別の生活背景の下で、疾患と共存しながら、いかにQOLの向上を図るかというアウトカムに対して、治療の進歩に伴い、その選択肢が複数考えられることが多くなってきました。私としてはそれぞれの治療法についてメリットとデメリットを丁寧に説明して、患者さんの意思で治療法を選択していただくことを基本スタンスとしています。

大学では要職に就きながら、開業医となったきっかけは何でしょうか。

大学には定年があるわけで、先輩方の多くは、それなりのポストを得て民間病院などに転じられてきました。私もメディカルトリビューンの転職支援サービスを通じて紹介いただいた病院もありましたが、そこでも当然組織の論理があるわけです。たとえば、IBD外来を立ち上げるにしても、患者数が定着するまでには5年程度かかります。さあ、これからという段階で65歳定年が規定といわれても抵抗感がありましたし、それが70歳であっても、まだ患者さんにしてあげられるものがあるのに辞めることになるかもしれません。医療に貢献できる限り、私の定年は、私自身が決めたいと思いました。もう数年早い退職だったら別の道も考えられたかもしれませんね。

新規のクリニック開業ではなく、既存クリニックの事業継承を選んだ理由をお聞かせください。

新規開業だと2~3年頑張って食いつないで経営を上向かせる必要がありますが、いまの年齢を考えたらそんな悠長なことはいってられません。体力的に無理をせず、ある程度経営のベースができているクリニックで立ち上がりの負担を減らしたいと思ったのが正直なところです。

旧竹並クリニック(現さいたま胃腸クリニック)をご覧になっての第一印象はいかがでしたか。

まず竹並クリニックは大宮駅から徒歩3分ちょっとと近いですね。それと、開設からまだ3年半ですから医療機器や内装も綺麗で、特に改装する必要はありませんでした。自宅から1時間程度の通勤時間もギリギリ無理のない範囲だと考えます。

継承開業からまだ2カ月余りですが、運営の手ごたえのようなものは感じられますか。

竹並前院長から引き継いだ患者さんのほかに、ありがたいことに東京の城南から埼玉へと長距離の異動にもかかわらず、前職で診てきた患者さんにも多数お越しいただいています。なかには20年以上私の外来にかかってきた方もいるのですが、提供してきた医療が間違っていなかったと実感しています。ここに来られない患者さんからも、開業の祝花などをいただきました。本当にありがたいことですし、医師冥利につきます。

クリニック名が変わり、院長も交代したことで、地域の方には新規のクリニックを受診するような感覚もあると思いますが、新患の獲得具合はいかがでしょうか。

現在は1日3~5人ぐらいでしょうか。予想より結構来ていただいている感覚があります。来院動機をうかがうと、ほとんどがウェブ検索で当院を見つけられているようですが、最近は少しずつ口コミで来られる方が見られるようになり、大宮の地に根を張り始めた感じになってきました。竹並前院長が痔の手術もやってこられたので、最初のうちは肛門の患者さんが多かったのですが、いまは消化器疾患の比率が高まってきました。

ポリペクも院内で実施されるんですよね。

安全を期して、原則的に直径3㎝以下のポリープに限って当院で行うことにしています。ところが大宮は思っていたよりも若い患者さんが多く、ポリープのある人が予想よりも少ないんです。一般的なクリニックに多い70歳代以上の方は、当院では3割もいません。そこが当初の予測と違っていたところです。ただ、IBDの発症年齢は20歳代がもっとも多く、年齢層が若いことが当院にとって必ずしも不利というわけではありません。

新型コロナウイルスが集患に影響しているような感じはありますか。

大きな影響はないと思っています。風邪の患者さんなどは事前に申告していただき、待合は別室で待機していただくことで、運営上の混乱は生じていません。昨年の緊急事態宣言下では、日本消化器内視鏡学会の提言で緊急性のない内視鏡検査を自粛してきましたが、病気そのものが減っているわけではありませんから、宣言明けに重大な疾病が多数診断され、診療が大変だったのが思い出されます。

今回の継承開業では、弊社とメディカルトリビューンの協業でサポートさせていただきましたが、先生の率直な評価をお聞かせください。

良い継承案件を紹介いただいたことがベースにありますが、日本医業総研の親泊さんには継承開業にかかわる手続きを一から十までサポートいただき、私は勤務先の患者さんに声掛けするなど、診療の準備に時間を費やすことができました。今回の継承は2月1日に契約し、3月1日の開設ときわめてタイトなスケジュールで、銀行の融資が実行されたのも2月下旬という綱渡りのような準備だっただけに、親泊さんのサポートは本当に力強く感じられました。

Profile

院長 篠崎 大先生
医学博士
日本外科学会 専門医・指導医
日本消化器外科学会 専門医・指導医
日本消化器病学会 専門医・指導医・関東支部評議員・学術評議員
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医・関東支部評議員・学術評議員
日本大腸肛門病学会 専門医・指導医・評議員
日本がん治療認定医機構 認定医
日本消化管学会 代議員
身体障害者福祉法 指定医(直腸障害・小腸障害)
東京大学非常勤講師

東京大学医学部医学科卒業
東京大学医学部附属病院第一外科研修医
亀田総合病院麻酔科研修医
日立総合病院外科医師
東京大学医学部附属病院医員
大蔵省印刷局東京病院外科医師
東京大学医学部附属病院第一外科にて研究・診療従事、医員
東京大学医学部附属病院第一外科助手
横浜市立市民病院外科
東京大学医学部附属病院大腸肛門外科助手
米国留学(John Wayne Cancer Institute)Research Fellow
東京大学医学部附属病院大腸肛門外科助手
東京大学医学部附属病院大腸肛門外科特任講師
大森赤十字病院外科部長
東京大学医科学研究所附属病院外科准教授
さいたま胃腸クリニック継承開設

Clinic Data

Consulting reportコンサルティング担当者より

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