October 2010
Prefatory Note
氏翠会ヘルスケアグループ 理事長 新貝憲利
精神科診療所に求めたい地域連携への積極的な取り組み
■連携の枠組みとしての医療圏
私の問題意識のひとつが、精神科に関する医療圏についてです。医療計画が登場した昭和 年の第二次医療法改正当時、どのような議論の結果、現状の姿(全県1本)になったのかは定かではありませんが、医療全般における重要なテーマである「連携」を軸にみると、極めて非現実的な状況といわざるを得ません。
実態に即した精神科医療圏について、成増厚生病院が位置する東京都板橋区を中心に置いて考えると、せいぜい隣接する練馬区、豊島区、北区といったエリアになると思われます。しかし、現実には東京都の南東に位置する葛飾区で発生した精神科の救急患者が、数十キロ隔てた八王子の病院へ搬送されるという事態が起きているのです。
■精神科外来医療の課題
次いで、連携のソフトに係る部分です。最近の精神科診療所の開業スタイルは、圧倒的にビル診となっており、夜間の対応が困難になっています。その結果、精神科医療における救急は、一次であろうが二次であろうが基本的には病院が担当するといった状況となっています。精神科医療における救急対応の特殊性はあるにせよ、先のような葛飾区の患者が八王子へといった馬鹿げた事態を回避するには、病診の連携が必要であることを、すべての精神科医療関係者が承知していると思います。
開業医の皆さんに改めてお願いしたいことの一つが、この救急への取り組みです。もちろん重篤な患者に診療所で対応するというのは非現実的です。しかし、自分の患者さんについては、その家族も含め一次救急への積極的な取り組みを期待します。
そのためには、連携病院との日常的なコミュニケーションが重要です。成増厚生病院では、近隣の診療所との連携構築のツールとして、電子カルテを柱にした地域連携システム(MICSS-MET)を運用しています。
しかし、残念なことにメンバーは限定され、積極的な診療所の参画がありません。地域医療を支える重要な柱は診療所であるという構図は、精神科医療においても同様であると思っています。どうか、病院との連携を基に、地域医療を支えて頂きたい。
■We are not ALONE
右記見出しは、今年11月に開催される第53回日本病院・地域精神医学会総会の基本テーマです。孤立感が病状に影響を与える、精神科疾患の患者さんへの呼びかけです。本会は病院や診療所の医師だけでなく、文字通り地域精神科医療を支える、数多くのコメディカルによって構成されています。
精神科疾患、特に統合失調症の患者さんを病院で支えていた時代は、もう過去になりつつあります。精神科疾患の患者も重篤な事例を除けば、ある程度地域で完結するような医療提供体制が望ましいと考えています。それを支え継続させる右記学会のような取り組みに、開業医の皆さんもコミットして戴くことを期待しています。
(文責 編集部)
コンサルタントの独り言
今回は、東京本社・宮本の「私の休日の過ごし方」についてご紹介致します。
私が社会人となって、入社5年が過ぎた頃から心がけているのは、休日には、できるだけ体を動かして、健康維持と気分転換を図るということです。そのためにスポーツクラブに通うようにしております。
私自身の中での取り決めとしては、毎週1回は通うこととしていますが、間隔があいてしまうこともしばしばあります。スポーツクラブにいる時間の大半は、プールで泳いだり、歩いたりしています。マッサージプールに入りながら、何も考えずに、大きな窓から見える街の風景を眺めている時間もあります。プールからあがりますと、サウナと風呂に入り、おもいっきり汗を流します。家に帰ってからのビールが格別に美味い!と、ついつい飲みすぎてしまうこともありますが・・・。
クリニックで日々患者さんに向き合い重責を担う院長先生は、正に体が資本だと思います。ご多忙な日常の中に、運動とリフレッシュされるお時間も大切に心がけ頂くことをお願いいたします。
Directors Interview
こんどう耳鼻咽喉科クリニック 院長 近藤千雅 氏
経営の安定があって医療の提供が支えられる
大阪市東成区今里。隣は焼肉の聖地として全国的に有名な鶴橋がある、極めて庶民的な町。こんどう耳鼻咽喉科クリニックがある今里クリニックモールは、1階がスーパー、2階がクリニックモール、3~5階がフィットネスクラブという商業施設。地下鉄今里駅を上がって徒歩1分という良好な立地である。
■人生の転機は突然に
-すばらしい施設ですね。このモールは近藤先生ご自身で探されたんですか。
いいえ。私の大先輩からの紹介でした。実は、私の実家もすぐ近くで、それを知っていた先輩が良い物件があるよと。
-じゃあ、既にその時には開業は意識されていた。
まったく(笑)。大先輩からの紹介だったんで、無碍にもできないし、まあ近いから覗いてみようかという軽い気持ちで見学にきました。他の診療科の内覧会の時だったんですが、良いところだなと思いましたね。モールをプロデュースした医業総研の方から色んな話を聞いて、なるほど開業するんだったらこんなところも良いかなと。
-じゃあ、即決ですか!?
まあ、それに近いでしょうか。見学が終わって、家内と両親に今里にこんなところがあるけど。開業するんだったら良いかもしれないな、と話をしたら、「近いからみんなで見に行こ」と。両親、家族総出で再度、見学したところ、みんな口をそろえて「えーやん!」(笑)。
-ご自身も開業を意識されていなかったのに、ご家族もよく納得されましたね。
そうですね。開業したのが昨年、勤務医となって14年目ですか。まだ10年くらいは勤務医として頑張ろうかなと漠然な思いでいました。家族もそうだったと思います。でも、いつかは開業するんだろうというのと、いくつで開業すれば、借り入れの返済も含め、その後の人生をうまく設計できるかという、逆算で考えなきゃいけないというのはありました。でも、人生の転機が突然目の前に訪れた。
■「自分の人生、後悔ないよう」
-ところで、医師を目指したきっかけは何だったんでしょう。
入院でした。高校2年までは工学部志望でしたが、事故で入院、頭部を10針程度縫うという経験をしたんです。そのときの脳神経外科の担当の先生がすばらしい方で、医師という進路も良いなと思って、急遽、志望を医学部に変更しました。
-ご両親はびっくりされた。
いいえ。今回の開業の時もそうですが、両親はいつも僕が決断したことに対しては尊重してくれます。進路変更の時も、開業の時も、話を聞いてくれて「自分の人生なんだから、好きなようにし、後悔せんように」と言ってくれました。
■考えすぎると足がすくむ
-医業総研との出会いは見学の時ということですか。
そうですね。そもそもこのモールを紹介していただいた先輩が、医業総研との係わりがあってということでした。
-印象はいかがでした。
実は、私はコンサルタントという方々に対する忌避感が根強くあって、先輩の紹介とはいえ、やはり警戒していたと思います、最初は。でも、担当の柳さんと色々と話をしていくうちに、ここはちょっと違うなと感じました。まず、上手ばかり言わなかった。厳しい話、メリットと同時にデメリットの話をキチンとしてくれましたから。
-とは言え、見学から開業の意思決定までほとんど時間がなかったでしょう。不安はありませんでしたか。
ないと言えば嘘。なにしろ即決しなきゃいけない状況(笑)。考える暇もなかった。でも、それが良かったと思います。検討する時間をとって、開業の下準備を細かくしようと考えていたら、こんな良い立地で体力も気力も十分な状況での開業はできなかったと思います。
-奥様が良く納得されました。生活の安定を失う可能性だってあったのに。
そうですね。家内が看護師ということがあったかもしれません。私のことを良く理解してくれている。今は、家庭に入っていますが、立ち上がり半年くらいまで、一緒に頑張ってくれてました。診療に打ち込んで入れるのは家庭が安定しているからだと感謝しています。
-これから開業を考える後輩にアドバイスすることは。
考えすぎるなということでしょうか。「人間万事塞翁が馬」といってはいけないのかもしれませんが、私自身の開業経験が、そうだといっています。色々考えすぎると足がすくんで動けなくなる。それと大事なことは経営の安定、それを担保する良い立地に恵まれるということです。開業して自分がやりたい医療を、と思っても、経営が安定していないとどうしようもない。志は高く持ち、経営にも心を砕く。これが開業医として大事なことだと感じています。
-ありがとうございました。
<<こんどう耳鼻咽喉科クリニック>>
診療科目…耳鼻咽喉科
住所…大阪府東成区大今里西1-26-5 今里クリニックプラザ内
TEL…06-6973-3387 begin_of_the_skype_highlighting 06-6973-3387 end_of_the_skype_highlighting
URL…http://kondojibi.com/
勤務医のための医院経営塾 Part5
第2講『資金計画集中講座I』
今号からは医院経営塾第二講の資金計画集中講座の内容をご紹介していきます。
資金計画集中講座の最終目的は、参加された先生方にご自身の希望を反映した開業の資金計画を作成してお持ち帰りいただくということです。
そのために、まずはクリニックの運営費用を把握していただきます。具体的には、収入の増減に伴って変動する費用(変動費)、収入の増減に関わらず発生する費用(固定費)のそれぞれに、どのような項目があり、それが一般的なクリニックであればどれくらいなのかをご説明します。特に、変動費の中の医療原価(薬品仕入、検査外注費)に関しては、診療科目別、院内処方院外処方別にご説明します。
次に人件費を計算していただきます。先生方が開業後、どのような人員体制で運営していくのかをお考えいただき、その体制をパートで回すのか、常勤スタッフを雇用して固定メンバーで運営していくのかをご検討いただきます。そして、各職種別の賃金相場を元に、お考えの人員体制であれば、月々いくらの人件費が必要になるかを、実際に先生方に電卓を叩いて計算していただきます。その際、先生方にあまり馴染みのない社会保険の適用に関するご説明もさせていただくとともに、実際に開業された先生方の事例もご紹介しています。
人件費の次は、地代家賃です。これも開業に必要な標準的な坪数を診療科目ごとにご紹介し、テナントの坪単価を掛け合わせて算出していただきます。ここでも先生方に電卓を叩いていただきます。ご開業を検討されているエリアのテナント坪単価については、弊社のコンサルタントが参加されている先生方の横に付いてアドバイスをしています。
これらは、時間も手間もかかる作業ですが、ご自身のお考えをまとめ、実際に電卓を使って具体的な数字まで落とし込んでいく作業は、参加された先生方にとっては、個別事情に沿った内容だという満足の声を頂戴しています。
次号は、リース料の計算についてご紹介していきます。
What’s New
施設半径1km圏内に人口約6万人! 集客力抜群の複合施設
今里クリニックプラザ
大阪市でも有数の人口密集地区である今里。地下鉄千日前線、今里筋線・今里駅から徒歩1分のところに今里クリニックプラザがあります。1階が阪急ファミリーストア、調剤薬局、2階にクリニックモール(7診療科分)、3~5階がフィットネスクラブと、抜群の集客力を持つ複合施設です。
施設そのものの魅力に加え、今里筋に面した今里クリニックプラザを中心とした半径1㎞の人口は約5万9000人と、高い市場性を備えた立地となっています。
現在、内科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科の5診療科が入居しており、残り2診療科分。この施設の特徴の一つが、ゆったりとした待合スペース。大きめのソファに加え、畳スペースもあり、高齢者にも優しい環境となっています。さらに、この共同スペースは、地域住民向けの健康教室の会場としても利用可能な仕様となっており、地域との積極的な交流も期待できます。
このモールで先行開業した、歯科、内科の内覧会の時に行ったアンケートでは、「今後、開院して欲しい診療科」として、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科、整形外科、婦人科が上位を占めています。既に上位3科は開業済みなので、整形外科、婦人科が地域で求められている状況です。
この今里クリニックプラザのお問い合わせは、株式会社医業総研大阪本社、電話06(4866)0230、担当猪川(いかわ)、田中、柳まで。
診療報酬改定
処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について
先般、長妻厚労相は後発医薬品への変更に関連する副作用等について、医師や調剤薬局の責とすることはできないといった趣旨の会見を行ないました。これで、後発品への切り替えで発生した副作用等の被害については、「医薬品副作用被害救済制度」の対象となる予定です。
この後発品等への切り替えですが、今回の診療報酬改定で一部変更になっています。改めて、以下確認してみましょう。
■確認なしの変更が可能に
保険調剤薬局では、今年の4月1日から、処方された薬剤を医師に確認することなく含量違い又は類似する別剤形の後発医薬品に変更して調剤すること(変更調剤)が認められています。
変更が可能なのは、以下の通りです。
(1)処方薬の銘柄名の近傍に「変更不可」、「含量規格変更不可」及び「剤形変更不可」の記載がない→含量規格が異なるもの及び類似する別剤形のものを含む変更調剤が可。
(2)処方薬の銘柄名の近くに「含量規格変更不可」の記載がある→含量規格が同一のものに限り、類似する別剤形のものを含む変更調剤可。
(3)処方薬の銘柄名の近くに「剤形変更不可」の記載がある→含量規格が異なるものを含み、同一の剤形のものに限って変更調剤可。
(4)処方薬の銘柄名の近くに「含量規格変更不可」及び「剤形変更不可」の記載がある→含量規格が同一であり、かつ同一の剤形のものに限って変更調剤可。
ただし、いずれの場合も「患者に対して説明し同意を得ること」が条件となっています。
一方、変更不可は以下の通りです。
(1)処方薬の銘柄名の近くに「変更不可」の記載があること等により、後発医薬品への変更が不可であることが明らかな場合。
「変更不可」と記載されていない限り、剤型や含有量のいずれかの制限があるものの、患者の同意があれば、後発医薬品への変更が可能ということになっています。国は医療費の適正化の狙いもあり、後発医薬品の使用促進を 年来掲げてきましたが、いわば処方権の一部に踏み込むような今回の見直しは、相当程度の覚悟の現われかと思われます。後発品の使用促進は、改定ごとに拡大していくとみて間違いないでしょう。今後は、後発品の情報にも目を向ける必要があると思われます。