■医師を志されたきっかけは。
実は、最初に入学した大学では法学部でした!?。漠然とした4年間を過ごして卒業を迎えたのですが、自分自身のなかで普通のサラリーマンとして働くイメージがどうしても浮かばない。学生時代、縁戚だった前院長の下に住み、そこで医療事務のアルバイトの経験もあったことから改めて医師を目指し、医学部を受験し直したわけです。
■外科を指向されたのは、当時の診療所の影響ですか。
それは確かにありましたね。アルバイトの立場でしたが救急医療の現場も見てきました。当時は「外科は潰しが利く」などといわれていた時代です。今ではまるで逆ですよね・・・(笑)。
■今回、有床診療所を閉鎖して、無床に切り替えられましたが、その理由をお聞かせ下さい。
有床診療所の数は全国で毎年10%程度のペースで減少しています。医療機関の機能が分化されていく中で、有床診療所の存在意義も問われていますし、365日24時間救急対応し、病床に見合った職員を雇用し、さらに経営を維持していくのは、肉体的にも精神的にも厳しいものがありました。
コンサルの決め手は、スピードと提案力
■そこで、医療者向けのセミナーに参加されたわけですね。
そうです。医業総研の小畑さんとは、セミナーの場を通じて紹介していただきました。
■コンサル会社についてどの様なイメージをお持ちでしたか。
正直にいえば、開業コンサルタント会社の善し悪しを事前に判断するのは難しいですし、本当に信頼できるのか、という不安感は抱いてました。
■医業総研の対応は、その不安を払拭するものでしたか。
医業総研から提案いただいた内容は、正確なデータに裏づけられたもので、説得力がありました。しかも対応が早い。実は、別の方にも経営相談をしていたのですが、提案内容はまったく逆だったのです。その方は、入院機能を捨てながら、外来機能を大きく充実させ、且つ敷地内にある不動産を別の用途で有効運用すべきだと。一方、小畑さんの提案は、「こんな時代なんですから、最小規模から積み上げ直し、地域の潜在医療ニーズを分析して、それにしっかりと応えましょう」というもので、わかりやすく、理に適ったお話でした。その提案を受けて当院の管理者会議で検討し、医業総研に依頼することに決めました。
■地域との関わりを大切になさっていますね。
地域は色々な意味で人と人が繋がっています。私もその駒の一つでしかありません。医師だから医療を提供することで、地域に貢献しようと思っています。どんな職業であっても、駒として地域での役割を果たす意義は基本的に同じですよね。私は医療を提供することでその役割を果たしているし、この地域の繋がりのなかで生きているのだという実感を得ています。
往診鞄を抱えて、地域中を廻る医師でありたい
■使用していない入院施設の利用なども含めて、診療所や先生ご自身の将来像は?
使っていない施設を利用して事業規模を拡大することは、今は考えていません。まず、再スタートした診療所の経営を軌道に乗せることに集中します。実は、私は田舎で黒い鞄を抱えて往診にあたる医師のイメージに、かなり以前からノスタルジックな憧れを感じていたんです。有床だったころは、救急医療も扱っていましたから、在宅や往診対応ができなかったので、尚のこと強い思いがあります。将来、後継者ができたら、外来をすべて任せ、私は往診バッグを抱えて日がな一日地域をうろうろと廻るのもいいかなと(笑)。
■これから開業を検討されている医師にアドバイスをお願いします。
私自身は既存の診療所を承継した上で事業転換したので、ゼロベースの新規開業についてのアドバイスというのも厚かましいのですが、診療所のあるべき将来像を見据えて、開業に挑むべきです。診察室にじっと座って患者さんが来院するのを待つのか。在宅医療や往診、介護に至るまで、地域に能動的に働きかけ、医療サービスを提供するのか。否が応でも、地域の医療ニーズに応えるのがかかりつけ医であると考えますので、地域を意識した自院のあり方を念頭に据えて開業するべきですね。