「いえとみ内科・胃腸科クリニック」は、家冨克之院長が勤務していた病院の門前で昨年8月に開業しました。開業時のインタビューでは、勤務医時代に診てい た患者が開業初日に30人以上来院するなど、順調な滑り出しの様子を伝えました。間もなく開業2年目を迎える同院は、内視鏡検査を専門としたことや、きめ 細やかな診療が評価され、地域の住民や近隣の医療機関から「なくてはならない診療所」として位置づけられています。
患者家族からの電話をうける家冨克之院長
医療連携を大切に考え 患者レポートは詳細に
■開業して1年弱ですが、患者数は増えていますか。
家冨 検診が少なくなったこともあり、近隣の医療機関からの紹介患者さんは減っていますが、口コミやリピーターの方が増えています。現在は1カ月に800枚くらいのレセプトのうち、200枚くらいが新患です。
■開業前に事前準備をしっかりされていたと聞きました。その効果でしょうか?
家冨 周囲の医療機関と連携を図るためにも、当院の特徴を明確に打ち出すことが大切だと考えていました。内視鏡検査を中心に、最近は超音波検査も実施しています。開業当初、紹介患者さんが多かったのは、「しっかり検査をしてもらえる」と認めていただいたからだと思います。
■リピーターが増えたということですが、診察時に気をつけていることは?
家冨 患者さんの“困った”をすぐに解消してあげることですね。たとえば、ただ薬を処方するだけでなく、点滴を打って 症状が改善するのを実感していただくといったことです。早く回復して、受診回数が減れば患者さんもうれしいはず。検査も含め、本当に必要なことだけを行う ようにしています。
また、ベッドに横になった患者さんの腹部を触診し、終了して起き上がる際に手で支えてあげるといった、患者さんとスキンシップを図ることも大切にしています。患者さんに安心していただければ「また来よう」という気持ちにつながると考えています。
■連携を図るうえで注意されていることは何でしょう?
家冨 医師だけでなく、紹介元の病院の看護師やコ・メディカルとの信頼関係も大切です。連絡を密にして、患者さんのレ ポートを詳細に書いて連携先に戻すようにしています。1カ月に45〜50件くらいの紹介がありますが、すべての患者さんのレポートを書くのは意外と大変な 作業。ただ、その労力を惜しむか惜しまないかで、連携先の印象が格段に変わってきます。また、開業後に経営を安定させるには、近隣の医療機関との関係づく りが大切ですから、紹介された患者さんは必ず返すようにしています。
家冨院長(右)とコンサルタントの小畑(左)
経営の悩みを相談できる人がいるという安心感
■間もなく2年目になりますが、現在実感していることは?
家冨 思いのほか診療以外に時間を取られるということですね。紹介患者さんのレポート書きや院内の患者データの整理に も時間がかかります。実は最近、父が亡くなり、葬式をするために検査予約をキャンセルしてもらわなければならなかったのですが、患者さんに迷惑がかからな いように、必要最低限しか休めませんでした。時間に融通が利かなくなり、本当に開業は楽じゃないと思いましたね。
手を抜こうと思えばいくらでも抜けますが、自分が頑張らないと患者さんに迷惑がかかるし、経営も成り立たなくなります。ただ、開業したことを後悔していま せん。好きなことをやれていますし、一国一城の主として気持ちの余裕も出てきました。自分の医療行為がダイレクトに患者さんに反映されているのを実感する と、やりがいもわいてきます。
■経営コンサルタントを活用することについては、どうお考えですか?
家冨 医療技術に自信があっても、経営にはわからないことが多々あります。悩みが相談できる人がいるのは安心感につながります。経営には「人」がいちばん大切だと考えていますが、日本医業総研の小畑さんにはスタッフの確保でもだいぶお世話になりました。
■今後の展望を一言。
家冨 開業医としての裾野を広げるためにも新しい分野にチャレンジしていきたい。また、時間に余裕ができたら学会や研究会にも積極的に参加して、常に勉強する姿勢を忘れないようにしたいと考えています。
家冨克之(いえとみかつゆき)先生
開業場所を決めるところから、ビルのオーナーとの折衝まで、こちらのニーズに的確に応え、スムーズに進めてくれたので、とても安心して任せること ができました。また、「ここだけは任せてほしい」という信念があることも頼れる要因になりました。これからも妥協することなく、時には厳しい意見を言って ください。
いえとみ内科・胃腸科クリニックの歩み
●2007年8月 いえとみ内科・胃腸科クリニック開業 開業初日に30人以上の患者が来院するなど、順調なスタートを切る。 専門の内視鏡検査の患者数は1カ月で110人
●2007年12月 臨床検査技師を雇用。検査体制が整い、現在は1カ月当たり約100件の検査を実施
●2008年5月 1カ月のレセプト枚数は約800枚。そのうち、200枚くらいが新患。 もう少し時間に余裕ができれば、学会や研究会への参加も視野に。