今回紹介するのは、いべこどもクリニックです。 この4月で開業2周年を迎え確実な発展を見せています。 連携先の病院の知己を活かした「顔の見える連携」や、細やかな患者への配慮は、 確実に地域の患者の口コミを呼び、磐石の経営を生み出しつつあります。
伊部院長(右)とコンサルタントの小畑(左)
「時間予約制」から「順番制」にシフトし増患に成功
■開業から2年が経ちました。ご自宅の近い当地での開業についてはどうお考えですか。
伊部 非常に満足しております。自宅の近くであること、集患を計算できる人口があること、そして病診連携の利便性があること、という3つが開業地選びの条件だったのですが、結果として当地を選択したことは間違っていなかったと思います。
■過去の勤務先である済生会横浜南部病院も非常に近くですね。
伊部 はい、今も顔見知りの元同僚が多く勤務しています。連携先の医師を知っているということは、連携するうえでの非 常に大きなメリットですね。患者さんが誰にどのように診療されるかがわかるので、私も安心して紹介ができます。結果として、この「顔の見える連携」は、私 だけでなく患者さんにも安心を与えてくれていますね。
■院内にも小児科らしい配慮が至るところに見受けられますね。
伊部 院内の壁の角部分にはRをつけ、ソファは子どもに配慮して低くしました。また院内感染を防ぐために、乳児健診や予防接種を受ける健康児用の待合室をつくりました。これは非常に好評ですね。
■そうした医療に対する姿勢が、住民からの支持を集めることになったわけですね。
伊部 昨年の1日平均来院患者数は50人弱でした。開業してしばらくは20人足らずであったことを考えれば、そういうことになりますね。ただ日本医業総研の小畑さんは「まだまだ伸びます」とおっしゃられて。
小畑 私が行った診療圏調査から考えれば、伸びる余地はまだまだあったので昨年の春に助言をいたしました。伊部先生 は、患者さんを待たせたくないというお気持ちから、小児科では珍しい「時間予約制」を導入されていたのですが、これでは診療人数に限界をつくり、また実際 に時間通りに診療が終らないことも多く、逆に患者さんを待たせてしまうこともありました。そこで伊部先生の理念を損なうことなく増患を図るために「順番 制」をおすすめしました。
伊部 インターネット、電話、携帯電話などの端末から予約を入れていただき、診療の順番が近くなったら来院してもらうという手法です。昨年の9月に導入しました。
■増患に効果はありましたか?
伊部 はっきりとありましたね。冬場の繁忙期には80人を越える日も出てきました。単純に実行の前と後で、1日当たり 約10人の増患があったといえます。またその時に同時にアドバイスをいただき、患者さんの相談相手となるように看護師を1人雇用しました。待合室内で医師 ができないような詳細な問診をしてもらったり、子どもの相談をもつ親御さんの話を聞いてもらったりと、患者さんと親御さんからも大好評です。
花粉の飛散状況などネットを利用し情報提供-
■医療における信条を教えてください。
わかりやすい医療を提供することです。十分に時間をかけて病状や治療の説明を行い、患者さんに納 得してもらうために、咽頭所見や鼓膜所見の際には、デジタルカメラで撮影した画像を使用しています。また、横浜市の感染症情報や花粉の飛散状況などのネッ ト情報を利用しています。電子カルテの内容もリアルタイムで見ていただいています。時間をかけすぎると待合での時間が長くなることが、今後の課題です。
■今後の目標をお話ください
小児科は“年齢別の診療科”とも言われ、さまざまな症状の患者さんが来院されます。当院で解決で きることは解決し、できないことは病院や他の診療科に紹介するなど、病診連携、診診連携を有効に活用していきたいと思います。何でも気軽に相談できる「子 どものかかりつけ医」として、親御さんとともに成長を見届けていきたいと思っています。
伊部正明(いべまさあき)先生
開業はとても大きな挑戦です。勤務医をしながら、準備をすることは難しいものでした。その傍らにプロとして立っていてくれた小畑さんは、常に複数 の選択肢を与えてくれて提案も多く、けっして押し付けることをしない、すばらしいコンサルタントでした。おかげで理想の開業ができました。今後も頼りにし ています。
ご経歴
1984年、三重大学医学部卒業後、横浜市立大学医学部小児科入局。神奈川県立こども医療センター感染免疫科、済生会横浜市南部病院小児科、横浜市立大学小児科、独立行政法人国立病院機構横浜医療センター小児科部長などを経て、2006年4月、いべこどもクリニック開院。
日本小児科学会小児科専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター