■開業では、どのようなクリニックを目指されたのですか。
開業前は、都内私鉄沿線のメンタルクリニックで約4年間雇われ院長を務めました。毎日三桁の患者さんを診てきましたが、中には長期間通院しても回復の芳しくない方もいて、薬物調整中心の医療に物足りなさを感じていました。特に「うつ」が慢性化・長期化する前に短期間で結果の出せる、独自の療法を体系化できないものかと考えるようになったのです。そこで医療にも活用できるNLPを習得し、他の心理療法と併せて実践するなかで、確実性と安全性を検証し、これを活かしたクリニックの開業を決意しました。
■医業総研のコンサルの印象は。
医業総研は友人の伝で紹介されました。事前に聞いてはいましたが、実際に提案いただいたプランの綿密さには驚きました。担当の親泊さんから示された開業までのスキームを見ると、横の時間軸に対して、事前準備項目が縦軸に100以上!これを自分一人で動いていたら、開業は一体いつになったことやら・・・。医院経営塾も受講しましたが、内容が非常に実践的で特に経営理念の重要性には納得のいくものがありました。
■開業への不安はありましたか。
損益上の患者数は念頭にありましたが、独自の医療サービスを実施し、一定程度認知されれば何とかなすはずだ、という感覚はありました。前職で1日120人前後の患者さんを診てきたことも自信の一端にはあります。実際、当初計画よりも早く、開業5カ月後の10月には損益分岐点となる患者数をクリアしました。
■患者さんの来院エリアや層は。
患者さんはクリニックのHPを見て来院される方が多く、当日の急な受診予約にも極力応じていますので、都内広域からいらっしゃいます。
性別では女性が65%といったところでしょうか。仕事を持つ20代〜40代、比較的に若い方が中心です。頑張っている人ほど、仕事の高度化や人間関係に起因するストレスを抱えています。「うつ」を中心に、自立神経を介した病状の方が多いのですが、特に女性の場合は摂食障害に至るケースも見受けられます。
NLPに精神医療の新たな可能性
■HPなどでも、NLPセラピーが強調されていますが、先生とNLPとの出会いをお聞かせください。
NLPは勤務医時代に経営者向けセミナーを受講したのがきっかけです。本来は、70年代にアメリカで開発されたコミュニケーション技法で、戦場で混乱をきたした帰還兵の精神的回復に用いられた心理療法です。日本では神経言語プログラミングといわれています。今ではビジネスマンや経営者に向けたモチベーションの維持・向上のためのコーチングとして徐々に認知されつつあります。
■それを医療にも取り入れようとされたわけですね。
NLPの特徴の一つは即効性にあります。そのメソッドを精神医療に活用することで、薬物中心の医療を補うことができないかと考えていたところ、椎名ストレスケア研究所(東京都町田市)を主宰する椎名雄一先生がNLPを「うつ」の治療に応用し成果を上げていることを知り早速門を叩きました。そこで、私の目標である「短期で効果の出る心理療法」を習得したことで、一人でも多くの患者さんにNLPを届けたいと強く思うようになりました。
■患者さん一人ひとりにNLPを説明しているのですか。
特に質問されない限り説明はしません。患者さんには医師がどこをどのように診ているのは分からないうちに、スッと悩みが抜けます。
ごく基本的な方法を一つ紹介しましょう。この小さな4種類のマスコットを患者さんに見せ、どれが一番好きですか?と聞きます。それらを手に少し考えた患者さんが「これっ!」と一つを差し出します。「ほーら、今の5秒間は嫌な上司のことを忘れていたでしょう!」と。悩みの情報空間から外に数秒間開放してあげるだけでも気分が変わることが実感できるわけです。個人差はありますが、暗く沈んだ表情で診察室に入られた患者さんが、数分後には心の底から笑って明るさを取り戻すことが多々あります。このような悩みのグルグルの外に抜ける瞬間を患者さんと共有することに開業医としてのやりがいを感じます。
コンセプトは「もやっとオフ」
■クリニックのサインやHPを見ると「もやっとオフ」と描かれたシンボルマークが印象的ですね。
患者さんの内面にあるモヤモヤとした悩みからオフしようというのがコンセプトです。本当はクリニック名に使いたかったのですが、規制上難しかったのでマーク化しました。これを見た患者さんが「なんだ、こりゃ!?」と感じていただければ良いですね。その瞬間からすでに患者さんの内面に変化が始まっています。
■今後の中長期的な目標をお聞かせください。
将来的にはNLPセラピーの機能を更に充実させたいですね。現在は院内の別室で3名の専門セラピストが週代わりで運営していますが、この機能をクリニックの連携機関として独立させて店舗展開することも十分可能性があると考えています。