採用決定時の留意事項2
遠慮は無用!自院の方針と院内ルールは入職前に叩き込むべし
勝手なルールが広がることも
今回は、採用決定時において書面以外で留意すべきポイントを解説する。
開業時は「院内ルール」が存在しない。
たとえば、休暇を取得する際は「休暇届を提出して院長の承認を得る」というごく当たり前のことが、
院内ルールが確立されていないばかりに行われない可能性がある。
また、「前の職場ではこうしていた」と、スタッフが前職のルールを持ち込んだり、
院長が望むものとまったく別のルールを勝手につくり、院長の知らないところで慣例化されている場合もある。
こうした現象は、就業面のルールだけに留まらず、患者さんへの応対や診療所の経営方針にまで及ぶことが少なくない。
そうなると、院長は「思い描いていた診療所になっていない」と落胆し、
その原因となったであろうスタッフを「扱いにくい」「早く退職してくれないだろうか」と、疎ましく思うようになる。
入職後に伝えても説得力は乏しい
開業時には誰もが「こんな診療所にしたい!」との思いをもち、どの診療所にもコンセプトがある。
採用時にすべきことは、院長の思いを受け止め、同じ価値観で仕事をしてもらえるかどうかを確認することである。
仮に、面接時に方針を伝えていたとしても、労働条件を説明する際には、
①どんな姿勢で業務に取り組んでほしいのか
②それを実行してもらえるのか
③診療所の方針を理解できたのかといったことを改めて問いかけ、
ベクトルの向きを合わせていく。
繰り返し伝えることで、スタッフの理解力も増す。
いわゆるこの説明が、問題スタッフを見抜く本当の「最後の砦」となるのだ。
方針以外にも、冒頭に挙げたような細かい院内ルールも同様に説明し
ておくべきだろう。人はルールがな
いなかでは、際限なく好き勝手なこ
とを言ってくる。「どうせ決まってい
ないなら、まずは主張してみよう」という気持ちが働くからだ。しかし、最低限のルールが決まっていると、
スタッフはそのルールのなかで行動しようと努力する。
ポイントは、スタッフから質問を受けた後でバタバタと決めるのではなく、前もってルールを説明すること。
入職後に伝えれば、スタッフに「聞いていない」「後から言われても…」と思われて説得力は低下する。
採用時には院長とスタッフが気を使い合ってコミュニケーションがなかなか取れないという話を聞くが、
労使トラブルを未然に防ぐためには、
「最初こそ肝心」という気持ちを強くもってほしい。そして、自らの思いを伝えるためにも、
院長として「ルール化しておくべきことは何か」をシミュレーションしておくといいだろう。
弊社で開催している「医院経営塾人事労務マネジメント編」では、
ワークショップ形式で決めておくべきルールを解説する講座を開催している。
ぜひ一度、伝えるべきルールを整理してみてはいかがだろうか。
高橋友恵 たかはし・ともえ
社会保険労務士。株式会社日本医業総研人財コンサルティング部マネージャー。
診療所での人財育成に関するコンサルティングを担当。
診療所特有の労務管理業務に携わり、200件以上の関与実績を誇る