ミーティングの活用法
限界がある院長のワンマン管理。月1定例ミーティングの開催で、文鎮型からピラミッド型組織へ
物理的にマネジメントが難しい
筆者は、創業期の診療所のスタッフ構成は基本的に常勤ではなく非常勤中心で考えてもらうようにアドバイスを送っている。
これは、間接人件費の抑制や来院患者数の伸びに連動したシフトの調整などが可能になるため、
収入が少ないうえ何かと不安定な創業期に運転資金の浪費をなくすためである。
ただし、人材育成という観点では工夫が必要だ。
非常勤中心で構成された組織は、院長をトップにほかのスタッフがすべて横一線のフラットな、“文鎮型”と呼ばれる体制となる。
院長によるワンマンコントロールで、方針の徹底や経営理念の浸透を図っていくことが必要な創業期などには効率的な体制と思われるが、
換言すれば、院長自身が人事労務マネジメントに十分な手間暇をかけなければならないということになる。
診療所の場合、院長は診察中、受付や処置室など主にスタッフだけで対応する現場の状況を把握しにくいという事情もあり、
物理的にマネジメントの限界がでてきやすく、各現場スタッフがある程度責任感と自主性をもって
対応していかなければならない点も見逃してはならない。
理想論でいえば、受付に院長の方針や思いをよく理解した右腕となる常勤スタッフがいて、
院長の目が届かないところの差配や教育を行ってもらえれば解決できる。
しかし、現状ではそうした人材を創業期から確保するのは難しい。
会合を通じて院長の考え方が浸透
その解決策として、筆者は月に1度全スタッフを集めてミーティングを行うことをおすすめしている。
ミーティングで各現場が抱えている問題点を抽出し、全員で解決策を話し合う。
院長の意向も反映させながら進行することで、院長の方針を全スタッフに浸透させ、責任感と自主性をもった人材へと各スタッフを導いていく。
筆者がコンサルティングを担当しているある診療所では開業時から約1年間、このようなミーティングを欠かさず行い、
待ち時間対策や健診関連のサービス向上などに取り組んできた。
ミーティングを通じて院長の考え方が浸透していく様子が、第三者の目にもわかる。
ミーティングで積極的な発言や宿題に前向きに取り組んだあるスタッフを、全員のコンセンサスをとったうえで常勤スタッフとして引き上げた。
これでその診療所は創業期から成長期への体制づくりに一歩踏み出したかたちとなり、
文鎮型からピラミッド型組織へとスムーズに移行していけるだろう。
以前も述べたように「人は育てるもの」という認識が必要。
診療所が成長期へと移行し、より発展していくには、院長の右腕となるリーダーを育てることができるかどうかにかかっている。
まさに院長には人材育成力が不可欠だ。
植村智之 うえむら・ともゆき
株式会社日本医業総研東京本社シニアマネジャー。過去300件の医院開業を成功に導いた同社の創業メンバー。
自身も50件以上の開業に関与し、そのすべてが軌道に乗っている。スタッフのモチベーションアップ研修、労務トラブル解決対策などに定評がある