放射線診断科を原点に広域な内科診療から呼吸器への高い専門性へ
医師としてのファーストキャリアは放射線診断科ということですね。
研修中の画像診断の勉強で、尊敬できる指導医に出会えたことがその後の進路に大きく影響しました。診断の的確さは診療科を問いませんから、そこでしっかりとしたスキルと幅広い知識を磨ければ、他の分野でも応用が利くのではないかと思いました。とくに画像データから得られる情報を評価する放射線診断は難しくもあり、面白さも同時にありました。
伊勢赤十字病院で幅広い内科を経験された後に、刀根山病院の呼吸器内科に勤務されたわけですが、国内初の公立結核療養所として開設された病院だけに、呼吸器領域全般で高度な医療を提供してこられたと思います。刀根山での5年間の勤務は充実されていましたか。
そうですね。呼吸器のなかで専門分化された環境で、疾患を診てきましたので、そこで鍛えられた部分はあります。喘息、COPD、肺炎など一般呼吸器疾患はすべて診てきましたし、肺癌を診ることも特別なことではなく日常の診療でした。
高度な医療の最前線に立ちながら、開業の可能性も視野に入れていたのですか。
潜在的に開業への興味があったのかもしれませんが、特別意識していたわけではありません。勤務医は皆サラリーマン医師なわけですが、大阪刀根山医療センターは案外好きにさせてくれる風潮がありました。転職する医師が多いのは病院としては困るのでしょうが、大学から若い医師がどんどん供給されるシステムができていましたので、運営に必要な医師の数は常に維持されていました。勤務医生活に不満があったわけではありませんが、先輩開業医から勧められたのが開業の1年前位だったと思います。
私ども日本医業総研は、確か地元銀行様のご紹介ということでしたが、開業について他のコンサル会社へは相談されなかったのですか。
数社面談して比較はしました。日本医業総研に対してはしっかりとしている会社という印象でしたが、決め手は山下明宏さんの力を信じたことでしょうか。そこは人物本位での意思決定でした。
患者さんの負担を軽減するスピーディーな対応
自院開業で発揮したい先生の強みや実現したかった医療についてお聞かせください。
対応のスピーディーさですね。病院ではいろいろな検査を重ね、1カ月以上をかけて治療方針を決めることがあります。それも病院機能の一つなのですが、クリニックで、その場で正しい診断をつけられれば、早期に治療を開始することができます。患者さんの多くも、それを望まれているはずです。1週間でも1日でも早くということに心掛けること、そこにさらに専門的な知識も加わることになります。
クリニックは呼吸器内科、糖尿病内科が強調されているイメージですが、里見先生ご自身は総合内科専門医でもあります。そういう意味では、内科領域全般のゲート機能的な役割も期待されそうですね。
臓器機能はそれぞれ相関し合っていますので、診療科ごとに高い垣根があるとは思いませんが、総合内科といっても全てに専門性が発揮できるわけではありません。慢性疾患が多いという点では内科には普通に対応していますが、患者さんが選びやすく、かつ地域に対しても責任を持って診るという意味で呼吸器と糖尿病を打ち出しているという感じです。
実際の来院患者さんの疾患の割合はどんな比率でしょうか。
約半数は呼吸器が占めます。糖尿病は約3割、残りが一般内科といったところでしょうか。このエリアに呼吸器内科が少ないということや、病院に比べて受診のハードルが低いという点で、アクセスしやすいのではないかと思っています。
住宅地での開業ですと、家族3世代での来院で、ファミリークリニックのような雰囲気もあるのではないですか。
それは結構ありますね。地域に根差した医療機関は私も意識していますので、約7年経って皆様からある程度認知してもらえるようになっているのではないでしょうか。
ホームページを拝見すると、医療脱毛やレーザーフェイシャルといった自費診療も導入されたのですね。
まだ始めたばかりなので、全然稼働には至りません。自費の分野で増患を図り裾野を広げようという意図はなく、現在来院されている患者さんへのプラスαのサービスという位置づけでの導入です。ただ、近年の診療報酬改定における保険医療費の抑制傾向が見られるなかで、多くのスタッフを抱える当院としては、第二の安定した売上軸を作っていくための言わば種まきのようなものです。
診察室を5診備え、2診が稼働するなかスタッフも増員されているようですが、チームパフォーマンスの向上や円滑な運営という面で実施されていることはありますか。
毎日の朝礼で、現在の医療情勢や感染症の動向など私の知る範囲の情報をお伝えし共有するようにしています。新たに採用するスタッフにはある程度の指導が必要ですが、開業メンバーも多く残っていますので、私の考えも伝わっているのではないかと思います。私も各部門に任せられるところは任せるようにしていますが、結構自主的に動いてくれているようですし、方向性さえ間違えないようにしてもらえばいいかなと思っています。
非常勤の先生方とのコミュニケーションはいかがでしょうか。
7名の非常勤医師がいますが、皆さん呼吸器もしくは糖尿病を専門に診療をおこなっている医師です。初めに当院の方針と、私のやり方をお伝えしていますが、基本的に医師は他の医師からいろいろと言われることを嫌がるものです。専門診療スキルは申し分ありませんので、私が口を出すことはありませんし、先生方には好きにやっていただいた方が、仕事も楽しいと思います。
即決したクリニック移転
7年前の開業以来盛況を続け、今年(2024年)の5月に「曽根東クリニックセンター」に移転されたわけですが、これはある程度計画的だったのですか。
開業時の物件は曽根駅前立地のテナントでしたが、老朽化と面積の狭さ、使用上の制約がネックになっていました。クリニックの成長・発展のためにも移転は必要だと考えていましたし、山下さんとも当初から将来的な移転を視野に置いていました。今回、山下さんから当医療ビルの情報をいただいたのですが、曽根駅から生活動線に沿って徒歩3分、旧クリニックからも近く、患者さんの離脱も考えられないことから、ほぼ即決で移転を決めました。
クリニックの移転について、山下さんはいかがですか。
(山下)先生の施設への不満は当初より分かっていたので、ご開院後もこのエリアの物件情報には常にアンテナを張っていました。いくつか良い案件もありましたが、その都度頓挫し、先生にもご迷惑をお掛けしていました。先生ご自身でも探され、2~3の候補もあったようです。当医療ビルの計画を入手したとき、絶対的な条件に合致することから、これは先生に最適だと判断し、すぐに里見先生の元に向かいました。
自院開業が成功し、今回の移転・拡張でさらなる成長も期待されます。クリニックと先生ご自身の将来像をどのように描いてらっしゃいますか。
医師としてのスタンスは何ら変わりませんが、経営者としての考えや行動は変わっていくところがあります。医療機能の拡大と経営の安定を図ることは、その時々の社会情勢にも影響されることを先の新型コロナからも学びましたし、経営者の考えが時代の変化にアジャストしていかなければならないと思っています。
医療機能としてはCTを導入したいのですが、医療機能にせよ、分院展開にせよ、必要なのは人材です。これは医療機関に限ったことではないのでしょうが、良い人材の採用は給与条件を上げて解決することではない時代です。当院の成長に課題があるとしたら、やはり人の確保というところでしょうか。
2017年の開業から今年の移転支援を当社コンサルタントの山下に、その間の税務・会計業務を税理士法人日本医業総研にお任せいただきましたが、当社グループのサポートについての忌憚のないご意見をいただけますか。
ダメだったら良好な関係は持続できません。開業から成長、医療法人成り、今回の移転・拡張と、ここまで継続していることが評価そのものではないですか。とくに山下さんは開業時だけでなく、移転においても私の要望をしっかりと押さえて対応してくれました。それがすべて結果に結びついていると思っています。
院長プロフィール
理事長・院長 里見明俊 先生
日本内科学会総合内科専門医
日本呼吸器学会呼吸器専門医
日本医学放射線学会放射線認定医
身体障害指定医(呼吸器機能障害)
難病指定医
2006年 三重大学医学部医学科 卒業 星ヶ丘医療センター 初期研修
2008年 京都大学附属病院 放射線診断科 市立岸和田市民病院 放射線科
2009年 伊勢赤十字病院 内科(呼吸器・糖尿病・循環器科)
2012年 刀根山病院 呼吸器内科
2017年 さとみ内科クリニック 開設