田島先生が専門診療科として形成外科に進まれた理由からお聞かせください。
親族が交通事故でケガを負った際に、形成外科的な再建術での治療を受けております。そのことは一つのきっかけではありますが、外傷や失われる組織を再建するというものに興味というか憧れのようなものは以前よりありました。
みなと中央病院での勤務を経て、2009年に長庚記念病院に留学されたのですね。
私が希望して1年間行かせていただきました。顎顔面チームで半年、顎再建チーム、外傷チームでそれぞれ3カ月間研鑽しました。
台湾最大規模で医療水準も最高位の病院だと聞き及びますが、日本とは異なる環境やしくみのなかで得た学びは何だったのでしょうか。
高度で活発な医療を実践されていました。私は国際形成外科学会でも知られているユー・レイ・チェン先生の下で勉強させていただきました。先生は最先端の医療提供と同時に、常に新しいアイデアを発表されていましたが、その源泉はまず患者さんの話に傾聴することでした。そこからこれまでにない術式を編み出してこられたわけです。理論や既存の術式ありきではない、患者さんの思いを受け入れて、それを実現するという臨床現場からの発想はとても勉強になりましたし、私の現在の診療スタイルの原点の一つでもあると考えています。
大学病院を中心に高度な形成外科医療をやってこられた田島先生が、自院開業を決断された動機は何でしょうか。
手術はもちろん嫌いではありませんでしたので、勤務医を続け大きな手術に関わっていくことも一つの道でした。ただ、患者さんとの一対一のコミュニケーションや小さな手術、小さな処置も好きでしたので、病院の外来ではなかなか手の行き届かなかった患者さんの細やかな相談にも応じていきたいと考えました。
病院の形成外科ですと、鏡視下での繊細な手技が連想されますが、設備や提供できる医療が限定されるクリニックで、先生の高い専門性をどう発揮しようとお考えですか。
クリニックで血管吻合などを行うことはありませんが、ホクロの除去や、粉瘤の切除といった小さな手術でも、切って縫うだけの作業ではなく、繊細な手技を常に心掛けています。手術の難易度において、「大きな手術だから難しい。」、「小さな手術だから簡単。」ということはないということは今までの経験でよく理解しています。私の手術手技は何も特別なものではなく、基本動作に忠実であることを意識しています。基本がしっかりしているので眼瞼下垂や瘢痕拘縮形成術等、様々な手術に対応ができると考えています。
今回、弊社日本医業総研に開業相談のお問合せをいただいたのは、どういうきっかけだったのでしょうか。
「クリニック開業コンサルタント」でのウェブ検索で医業総研のホームページが目に留まり、サイトから問合せをしました。勤務医時代に取引のあった業者さんもコンサル機能があったようですが、今一つピンときませんでした。
開業の立地選定として「阿倍野」は最初から意識されていたのですか。
阿倍野に住みだしたのは2012年の大阪急性期・総合医療センター勤務からです。人生の約四分の一の期間を過ごした場所だけに、私にとっては地元に近い愛着があるし、実際に住みやすいいい街です。開業を決めたときも、なるべくこの地でと考えていました。担当コンサルの山下さんの行った診療圏調査では、隣の天王寺は皮膚科の競合が多いものの、阿倍野駅周辺のエリアは専門クリニックの空白区であることがわかり、駅近で生活動線に面したベストと思える物件を紹介いただきました。
標榜している皮膚科、形成外科ともに、自費での診療も選択できますが、保険と自費の位置づけをどのように計画されましたか。
診療のベースは、あくまでも保険で、カバーしきれない部分を自費でというのが基本的な位置づけですが、患者さんの希望に沿った選択肢を提案するのが当院のスタイルです。相談の多いシミや黒子にしても、皮膚科、形成外科、美容形成という3つの視点による見立てと治療アプローチがあります。美容領域に関しても、患者さんの希望は聞き入れますが、性急にすべてをやらなければならないとは思いません。開業時に導入した機器もCO2レーザーだけですから、保険診療からの段階を踏んで患者さんとの信頼関係を構築し、確かなニーズを確認しながら、少しずつ整備していこうと思っています。
疾患や治療法に多様性がある皮膚科ですが、内科疾患が症状として皮膚に表れることもありますね。
内科・皮膚科医としての若干の弱さは認めますし、乾癬などでの生物学的製剤使用承認施設の要件も満たしていませんが、そこまでの治療が必要と判断される場合は、適切な医療機関に紹介するようにしています。もちろん、患者さんの全身状態を診ないというわけではありませんが、私の場合は漢方医学的な観点からアプローチすることがあります。皮膚科系漢方医はおりますが、形成外科系漢方医という概念は確立されていません。前面に押し出すことはありませんが、多方面からアプローチするメソッドとして形成外科医療と東洋医学をからめた手段があってもいいのではないかと思っています。
そうした先生のお考えをご理解いただくことも含め、患者さんとのコミュニケーション、信頼関係の構築が大切ですね。
その点に関しては診療方針としてホームページにも明記しているように、「患者さんが納得できる医療」を一番に心掛けています。ホクロの相談では切除を希望される方も、メスが怖いという方もおられます。ステロイドの塗り薬に副作用を心配される方もいます。受けたい医療を選ぶのは患者さんです。「これ、切った方がいいのでしょうか?」という相談にも、私は一方的に結論付けず、あらゆる選択肢を示して、患者さんがご自身の意思で納得のいく方法を決めていただくようにしています。相互の信頼関係は、その積み重ねの結果だと思っています。
患者さんが増えるにつれて運営上重要になるのが、スタッフのスキルです。開業での採用の基準と、開業後のスキル向上の取り組みをお聞かせください。
患者さんと接するうえでの医療従事者としての「優しさ」で人選しました。皆さん、医療機関での勤務経験があっても皮膚科は初めての方ばかりでしたので、皮膚科疾患のスライドを用意し、朝礼時と昼休みの約5分間レクチャーしています。今後のマンパワーバランスを考えて看護師の増員は予定していますが、私が診療に集中できる環境を維持するために受付スタッフの一人にシュライバー研修のような形で診察室に入っていただいています。
内覧会も盛況だったようですね。
8月の猛暑日でしたが、多くの方にお集まりいただきました。競合クリニックが少ないせいか、当院での受診を前提に来られた方も見受けられ、そのまま順調に立ち上がりました。
今回の日本医業総研の開業サポートについての率直な感想をお願いいたします。
何のストレスもなかったというのが大きかったように感じます。自院開業の覚悟には、どうしても気持ちの昂りや不安がつきまといますが、担当の山下さんの冷静な判断と対応には心強いものがありました。実際に、確かな診療圏調査と物件選定の結果が、予想を上回る集患につながったと実感しています。
院長 田島宏樹 先生
院長プロフィール
日本形成外科学会 専門医
日本形成外科学会 指導医
日本形成外科学会皮膚腫瘍外科分野 指導医
日本形成外科学会小児形成外科分野 指導医
日本形成外科学会レーザー分野 指導医
日本形成外科学会再建・マイクロサージャリー分野指導医
2004年 | 三重大学医学部医学科 卒業 大阪大学医学部付属病院 臨床研修 |
2006年 | みなと中央病院 形成外科 |
2009年 | 台湾 長庚記念病院 形成外科 留学 |
2010年 | 大阪母子医療センター 形成外科 |
2012年 | 大阪急性期・総合医療センター 形成外科 |
2015年 | 大阪国際がんセンター 形成外科 |
2019年 | 大阪大学形成外科 助教 |
2022年 | たしま皮フ科形成外科 開設 |