実感できる治療の成果を確実にだすこと。患者さん満足度、職員満足度の向上が結果として経営を伸ばす

木山洋之 先生

きやま整形外科 痛みとリハビリクリニック
院長

整形外科という進路は、大学時代からある程度決められていたのですか。

実はストレートで卒業させていただいたのが申し訳ないくらい、あまり真面目な医学生だったとはいえず(笑)、心臓外科や脳神経外科などのようないわゆる花形路線や、大阪大学に多い基礎研究に勤しむエリート路線の考えは元よりありませんでした。整形外科を私たちは直接生死にかかわらない〝マイナー外科〟と呼んでいましたが、私の場合物理と化学では物理の方が好きで、心臓などと同様、動きがイメージしやすい関節や筋肉に興味がありました。

整形外科の面白さや醍醐味はどういったところにあるのでしょうか。

痛みがとれて動けるようになる、曲がった関節がまっすぐに伸ばせる、骨折によって破壊された部位が元通りの機能に回復する。手術も含め適切な医療介入によって、患者さんの満足度は確実に高くなります。そういう意味では、いまの医学で一番疾患を治せるといっていい分野の一つが整形外科だと思っています。

阪大附属病院のほか関連病院での勤務で手術実績の豊富な木山先生が、自院開業へと向かわれたきっかけは何でしょうか。

阪大の整形外科は医局内で明確に分業されているのが特徴です。股関節なら股関節、脊椎なら脊椎ばかりとそれぞれのスペシャリストが育つ環境ではあるものの、私には同じ手術を何十年続けるようなライフプランはイメージできませんでした。幸い私は骨接合術から人工関節置換術まで多彩な手術を経験させていただき、それなりの手技を磨いてきたつもりですが、出張する病院の規模が小さくなるほど、高齢者の手術が中心となります。当然、若い人に比べると、予後の回復は思わしくなく、結局寝たきりになるのを防ぐ手術がメインになるわけですが、それでも施設に入所しなければならないケースが多く、外科的なアプローチより保存療法による骨折させない治療の方に興味が湧きました。10年後に寝たきりにならない治療が実践できたらいいなと思うようになったわけです。

先生の診療への考え方や強みをお聞かせください。

10年前位でしょうか、自分の仕事がとても嫌になった時期がありました。病院の整形外科は手術で治す重症患者さんがなによりも優先されます。つまり、痛みで来院される方にレントゲンを撮って、なにも異常がなければしばらく様子見ということで湿布薬と鎮痛剤を処方して終わりなんです。それでは整形外科医の存在価値がありません。医者は治療薬の自販機であってはならないはずです。接骨院が盛況なのは、患者さんのニーズを整形外科医が満たしていないことの証左といえます。

そうした慨嘆のなかで出会ったのが神経ブロック治療です。エコー画像から患部に限局してブロック注射を投与する治療が私の感覚にピタリとマッチし、それまで様子見と診断してきた患者さんにブロックで痛みを取ったうえで、しっかりとリハビリしましょうという診療スタイルが確立しました。痛みがあったらリハも苦痛でしかありませんから。四十肩、五十肩の患者さんの痛みも劇的に改善されています。ここで治らなかったら、手術か諦めるかどちらかしかない、というぐらいに自分を追い込んで治療に取り組むつもりですし、ここで整形外科外来の標準形を目指したいと思っています。

先生にとっては外来の考え方そのものが変わったということでしょうか。

「外来だけだとつまらないでしょう?」「手術の方が楽しいでしょう?」というような会話がよくあるようですが、いまは外来の方がよほど楽しく感じられます。もちろん整形外科医療に手術機能は不可欠ですが、痛みを訴える患者さんを手術せずに治療することに真剣に取り組む整形外科医がもっと増えていいし、そこに進歩の可能性があるように感じています。

開業場所としては、どのような立地をイメージされていたのですか。

どんなに高い理想を掲げても患者さんが集まらなければ絵に描いた餅ですから、担当コンサルタントの山下さんにはとにかく人口の多いエリア、それと華やいだ街中ではなく、逆に少々枯れた雰囲気という条件で立地調査をお願いしました。イメージでいうと千里中央に広がる「ニュータウン」という名の「オールドタウン」で、完成から数十年を経て住民の高齢化が伸長する街が整形外科にはいいかなと考えていました。山下さんから提案いただいた当クリニックビルはまさにその条件に合致するもので、近鉄奈良線を挟んだ西岩田3丁目には築年40年前後のマンション群があり、70代~80代の方も多く住まわれています。実際、患者さんの来院エリアもみても西岩田3丁目が多く、「きやま整形外科で痛みが取れた」という口コミが地味に広がっているようです。

クリニック名に「痛みとリハビリクリニック」とされているのには、先生のそうした思いが込められているのですね。

似たようなクリニック名が並ぶなかで、どう特徴を打ち出すかということも当然ありましたし、医師会の名簿などに載せたときにタダで宣伝できるかなと……。動機としてはそんなところなのですが、実際に痛みで来院される方が多いので正解だったと思っています。ただ名前が長いので、ゴム印ができるまでに書類に名前を書くのが面倒で、医師会からも「長すぎるのはやめたら?」といわれました(笑)。

クリニックで提供しているリハビリについても話をお聞かせください。

物療の機器は導入しませんでしたが、大正解だったと思っています。

私は電気治療や牽引治療の効果にやや懐疑的なところがあって、基本は自力で歩くこと、体を動かすことを続け、効果を実感していただくことを大事にしています。開業当初は2名のリハビリスタッフでのスタートでしたが、開業2カ月目でリハ単位が満杯状態です。すでに予約も2週間待ちですので、OT、PT各1名の増員が決まっています。

リウマチ患者さんにはどのように対応されていますか。

リウマチ患者さんを積極的に受け入れると経営は安定すると昔からいわれてきましたが、現在は免疫内科で扱うべき領域ではないかと私は思っています。生物学的製剤などの普及で関節破壊も大分抑制され、寛解される方も増えています。もちろん、相談を受ければ診断はつけますが、私の強みが発揮できる疾患ではありませんし、重症者を除き薬物療法が適切と判断される場合は、免疫内科に紹介することになると思います。

一方で、DEXA法での正確な骨密度測定を行うなど、骨粗鬆症には力を入れていくというお考えですね。

そこは本気で診てあげたいですね。病院では高齢者の大腿骨骨折手術を数多く手がけてきましたが、術後の回復度合いを考えたら折れた時点ですでに負け戦のようなものです。幸いなことに、骨密度の増加が期待できる治療薬が増え、患者さん個々の症状や進行度に合わせた選択ができるようになりました。負け戦を発生させない、当院から半径200m以内は明らかに骨折率が下がったといわれる医療を提供していきたいと思います。

整形外科の運営では患者さんが増えるほどにスタッフのスキルと連携が重要になってきますが、そのために実践されていることを教えてください。

採用したスタッフは経験よりなにより相性と人物本位です。技術的なことは経験を積む中で習得できますので、私の思いのベクトルを理解し共有できることが大事です。私にとって経営は、スタッフ満足度を高めることの先に患者満足度の最大化が得られると考えています。つまらない仕事で本人の実力が十分に発揮できなければ、働くモチベーションも起こりません。「他の医療機関より、絶対にここだ!」と感じてもらうことが大切で、給与水準も決して低くはないと思っています。そしてなによりもスタッフに感謝すること、「当院は皆さんが頑張ってくれているからうまくいくんです」という気持ちは日ごろから伝えるように心がけています。

今回、木山先生の開業サポートを弊社コンサルティング部の山下に、また開業後の税務・会計を税理士法人日本医業総研にお任せいただきましたが、私どもグループ提供する業務について、率直な評価、ご意見をいただけますか。

的確な立地選定や事業計画策定、各種業者さんの手配など、山下さんのサポートには本当に感謝しています。開業コンサルといっても、医療関連卸さんなど本業に紐づいた副次的なサービスとしてやっているところも多く、医師とのトラブルも少なくないと聞きます。日本医業総研のように税理士法人をベースに持つコンサルティング会社は情報の精度と透明性が高く、圧倒的に信頼感が違います。開業まで導いて終わりではなく、開業後もコンサルタントと担当税理士、社会保険労務士などの密な連携で切れ目なくフォローしてくれています。業種特化したグループ力にはやはり心強いものが感じられ、私自身もストレスなく経営と診療に集中することができています。

院長 木山洋之 先生

院長プロフィール

1999年 大阪大学医学部 卒業
大阪大学整形外科教室 入局
1999年 大阪大学関連病院の整形外科勤務
大阪大学医学部附属病院、八尾市立病院、
大阪警察病院、大阪中央病院、友紘会総合病院、協和会協立病院など
2016年 恵仁会田中病院整形外科
2022年 きやま整形外科 痛みとリハビリクリニック 開設

Clinic Data

Consulting reportコンサルティング担当者より

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