診療科についてですが、仙田先生は卒後の臨床研修を終えて、迷わず皮膚科に進まれたのですか。
臨床研修中はどの診療科にも魅力を感じましたが、皮膚科を研修していた際に診療領域の広さと奥深さに興味をもちました。皮膚科の部長には非常によくしていただき、結局、春夏秋冬、季節ごとに各1カ月ずつ研修させていただきました。
私たちにとっては比較的身近な症状であっても、皮膚科は疾患の種類、治療のアプローチが多様で、病理学の研鑽も求められます。皮膚科診療の醍醐味や面白さはどのへんにあるのでしょうか。
患者さんからすると、市販の塗り薬などこれまで使っていたお薬で症状が改善せず、新しい診断のもとで、治療方針がスパッと決まり薬物療法で著効が得られたり、あるいは、長年こころの澱のような悩みだったイボや黒子なども、「今日手術で取れますよ」と受診当日に除去を提案したりするなど、低侵襲でスピーディーな治療ができれば患者さんは本当に喜ばれますし、担当医としては達成感があります。
また、「この症状はなんだろう?―少し嫌な予感がする」と訴えて受診された方に速やかに皮膚生検を行い皮膚の病理診断結果を示して、悪い出来物である旨を伝えるケースもあります。しかし、そうした際も、早期に相談に来られ、タイミングよく検査を受けられて診断がつき良かったですね、と的確な診断と治療法を示すことで、患者さんは悲観することなく納得されています。手術もそうですが、医師の判断でその場で柔軟に対応し、結果が出せることが皮膚科の醍醐味ともいえます。
内科系の疾患で、症状が皮膚に表れるケースもあると思います。そういう意味では、皮膚科専門医は内科的な視点や診断のセンスも問われますね。
糖尿病に伴って傷が治りにくく、感染を生じやすくなりますし、かゆみが治らない際に内科疾患が潜んでいる場合があります。また膠原病の一つである皮膚筋炎は、内臓悪性腫瘍をきっかけに発症する場合があることが知られています。内科との連携が重要であり、結果として患者さんの健康全体の増進、メンタルヘルスの領域にまでかかわることも、皮膚科医に求められている機能だと思っています。
比較的若い年齢での開業が多い皮膚科ですが、元々、開業医志向のようなものはお持ちだったのでしょうか。
研修から母校に戻ったときは、まずは一人前の皮膚科医になることに専念していましたし、大学病院では難治性の重症患者さんへの集学的治療や手術など、手技を磨く機会と環境が整っていました。大学病院、市中の総合病院、市中のクリニックの外勤などさまざまな場でも勤務を経験させていただいたなかで、患者さんと緊密な距離感で接し、訴えに傾聴して治療をすすめる診療に魅力を感じるようになりました。
先ほどの「今日オペができますよ」という対応も、クリニックならではの医療提供ということでしょうか。
そうですね。大学病院では重症者や緊急の患者さん、他院からの紹介患者さんが多いので、長い待ち時間が発生しますし、原則的にどんな手術でも予約制となります。それぞれの病院の規模により、役割の違いがありますから、当院のようなクリニックでは小回りが利くことや、スピーディな対応を大事にしたいと思っています。
私ども日本医業総研は2020年に開業された河合徹先生(成増駅前かわい皮膚科院長)からのご紹介でしたね。
そうですね。河合先生は医局の同期になります。開業後は盛業されているようですが、いまでも昔と同じ、気心の知れた信頼関係でつながっていますし、折に触れいろいろと相談させていただいています。
ご参加いただいた弊社主催の「医院経営塾」についての感想をお聞かせください。
Webでの参加でしたが、一勤務医には初めて知ることばかりでした。開業医としては習得しておかなければならない内容でしたが、一人で開業のことを考えていても、まず学ぶ機会がありません。お誘いいただき助かりました。
阿佐ヶ谷を開業地とされた決め手は何でしょうか。
最初は自宅からの通勤を優先してエリアを検討し、賃料相場などもわからないままにイメージ優先で物件情報を入手していました。そこから担当コンサルの三木さんとも相談し、エリアを中央線沿線として広げて診療圏を調査したところ、意外なことに阿佐ヶ谷で皮膚科ニーズが高いことがわかりました。周囲の環境なども私の理想に近いものでした。
駅前徒歩2分の好立地によくこれだけの物件がありましたね。
そこは三木さんの情報収集力です。当初は中央線の駅ごとに物件をリストアップして慎重に検討しようと思ったのですが、この物件を見て直感的に良いと感じました。皮膚科としての高い技術や良質なサービス提供が前提にあるとしても、やはり通院しやすい、空き時間に寄れるといった立地は患者さんの利益になると考えますし、治療を続けられることが結果としてQOLの改善・向上といったアウトカムに結びつくと考えています。
内覧会では約170人の方が来られ盛況だったとうかがっていますが、やはり地域から待ち望まれていたということでしょうか。
これも駅前という立地によるものが大きいでしょう。実際、「この周辺にあまり皮膚科がなくて」「ここなら便利で受診しやすい」という声を多くいただきました。おかげさまで開業後の立ち上がりも順調です。
大学病院のような医療機能は提供できないまでも、仙田先生の強み、専門性はどういう部分で発揮されていますか。
クリニックですべてができるわけではないのはその通りですが、カバーできる治療範囲は徐々に増やしていくことで差別化を図ろうと考えています。たとえばアトピー性皮膚炎における保険での生物学的製剤の投与は患者さんからとても好評を得ていますし、紫外線治療も通院のしやすさを活かして積極的に行っているほか、大学病院ではレーザー専門外来を担当してレーザー専門医も取得しており、保険診療・自費診療でのレーザー治療などでも専門性が発揮できています。
小児患者さんも少なくないと思われますが、付き添いの保護者にとっては原因もわからず、慢性化するのではないかなど必要以上に心配されることもあります。そうした場合の説明で気を付けていらっしゃることはありますか。
お子さんは症状を正しく伝えられないだけに、親御さんが強く心配されるのはよくわかります。まずは心配をしっかりと取り除いて差し上げること。そのために、細かすぎるくらいの丁寧な説明に心がけています。あとは、一旦症状が治まっても、自己判断で治療を中断させないことも重要です。アトピー性皮膚炎のように、いい状態を保ち続けるための治療ということにも理解を深めていただくようにしています。
美容やアンチエイジングなどの自費診療は、経営上どう位置付けていらっしゃいますか。
基本的には保険診療がベースです。そこでカバーしきれない領域が自費になるわけですが、そこでどのような治療を受けるのか、選ばれるのは患者さんです。いまはネット検索でさまざまな情報を調べてから来られる方も多いので、要望を尊重しつつ、同時に経済的な負担も考慮しながらいろいろな選択肢を提案するようにしています。なかには当院では実施していない施術などもありますが、それも選択肢としてお話し、保険・自費を問わず患者さんにとって最善の方法を提案しています。
今後患者さんが増えていくに連れて、受付、問診、検査、治療・処置、美容の施術、会計といった流れを滞らせないためにはスタッフのスキルとともに、チームの連携が不可欠になると思われます。スタッフの採用基準や育成といった面ではどのようなことを実践されていますか。
採用基準を一つあげるとするなら、人物本位ということです。実際採用したのは、皮膚科の未経験者の方が多いのですが、開業直後の比較的患者さんが少ない時期に、診察や処置の勉強を私と一緒にやっていただきました。皆さん非常に熱心で、いまでは、私が目を向けた瞬間に次の動きを察知して、必要な物品を用意してくれるまでになりました。本当に優秀な人たちを採用できました。当院ではあえて役割を固定せずに、全員が臨機応変、フレキシブルに動けるようお願いしていますが、皮膚科の知識が徐々に身に付き、同時にクリニックへの愛着や医療従事者しての自覚も醸成されつつあると感じています。
今回開業のサポートをコンサルティング部の三木が、開業後の税務・会計は税理士法人日本医業総研の篠原が担当させていただいていますが、弊社グループのサービスについて忌憚のないご意見をお願いします。
全体的に非常に満足しています。とくに、この物件にピンポイントで着目した三木さんのプロフェッショナルの視点が、立ち上がりの不安を軽減してくれました。終始しっかりと腰を据えたコンサルティングを提供していただけました。
院長 仙田直之 先生
院長プロフィール
医学博士
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
日本レーザー医学会認定レーザー専門医
—
2012年 | 東京大学医学部医学科 卒業 |
2014年 | JR東京総合病院 研修終了 東京大学皮膚科入局 東京大学医学部附属病院皮膚科 |
2019年 | 東京大学医学部研究科 修了(医学博士) 東京大学医学部附属病院 皮膚科 助教 |
2020年 | 関東中央病院 皮膚科 医長 |
2021年 | 池袋駅前のだ皮膚科 副院長 |
2022年 | 阿佐ヶ谷駅前パール皮膚科 開設 |