整形外科という進路は早くから決めておられたのですか。
手技を用いる外科系へ進みたいという気持ちが前提としてありましたが、子どものころから怪我の手術などを受けてきた経験があって、整形外科医が最も身近な存在としてありました。
大学病院を始め、関連病院で手術を含めた高度な医療を実践されてきた先生が、医療機能が限定されたクリニック開業へと向かわれたきっかけをお聞かせください。
手術ありきで医療に取り組んできた面が大きかったので、開業でその機会をなくすことには少し勇気が要りましたが、それ以上に外来で時間をかけて患者さまと向き合い、訴えに傾聴する診療が私には向いているように感じました。手術のやりがいとは比較できませんが、患者さまとのコミュニケーションのなかから治療の方向性を見出し、患者さまが少しでも良くなったと感じて頂けることにすごく手応えが感じられました。勤務先病院の外来にいても、自分だったらこうするかなといったアイデアや、もう少しこうしたら患者さまに喜んでいただけるのではないかと考えていましたし、だったら理想とする医療環境を自分で創ってみようと思った結果です。
今回の開業では、実業家でいらっしゃる先生のお父様を通じて弊社にコンタクトいただいたということでしたね。
父は私の開業の意向を聞いて、会社の取引先の銀行から日本医業総研を紹介され、すぐに動いたようです。私は私で他のコンサルタントの話も聞いていたのですが、その多くが開業させたらそこで仕事は終わりという印象を受けました。開業後も税理部門を担当して頂けることで、開業後の経営の安定までを見据えての支援をして頂けるというところに日本医業総研の信用があったように思います。
開業の立地選定ですが、伊勢原市というのは具体的なイメージとしてお持ちだったのですか。
伊勢原市は私の出身地のすぐ近くでもありますが、最初はとくに強く意識していたわけではありません。ただ、伊勢原市内の総合病院での勤務経験から、元々整形外科クリニックが少ない地域であることは分かっていました。本来クリニックで提供できる治療も総合病院の外来が受け皿になっていたわけです。当時から、軽症の患者さまは、なるべく開業医に回そうという流れがあったのですが、今も状況はあまり変わっていない様子でした。
なるほど。この地域の医療環境を把握したうえでの決定だったわけですね。
近隣の総合病院をはじめ、地元にはいまでも懇意にさせていただいている先生が多く、地域連携にも活かせて、かつある程度の土地勘もあるといった点で開業地にマッチしました。
この土地は弊社の小畑がエリアをくまなく回って、ピンポイントで探り当てたわけですが、駅前商業立地のビル診ではなく、住宅地での戸建て開業というお考えは前提としてあったわけですか。
駅前テナント開業のメリットもあるのでしょうが、リハビリ施設を充実させ、十分な駐車台数を確保し、しかも造りの自由度も高い戸建て開業にこだわりました。また、診療圏調査の結果、世帯数の多い郊外の方が集患が見込まれました。物件は車通りの非常に多い国道から少し入った場所で、かつその先にショッピングモールもあり、車での移動が主となるこの地の生活動線としては間違いなく一番立地と思われました。小畑さんがよくぞこの場所に着目されたと思います。
開業準備中に、かつて小畑が担当し盛況している「北習志野整形外科クリニック」を見学され、新保純院長とも面談されたようですが、今回の西田先生の開業に参考になりましたか。
すごく勉強になりましたし、参考にさせていただきました。建築士に同行してもらっての訪問でしたが、細部のディテールにわたって見学させていただきました。私自身、これまで病院診察室と手術室にいて、待合室の雰囲気などあまり気にしたことがありませんでした。意思決定の大事なタイミングでクリニックの雰囲気や機能のほか、新保先生の貴重なお話も聞かせていただき、開業像がリアルになってきました。
西田先生はホームページに「身近な地域のかかりつけ医」「安心して受診いただける」「みなさまが健康で笑顔になれる」という誰にでもわかりやすい言葉で3つの理念を掲げておられます。この理念に込められた思い、その浸透と実践についてお聞かせください。
私から積極的に地域に合わせていくということです。専門性を言葉で打ち出すのは簡単なことですし、診療でも発揮されています。でも、ここではまずかかりつけ医であることが一番求められていると考えました。スタッフに対しても、ミーティングや個別面談で繰り返し3つのスローガンに込めた思いを伝えています。本当にありがたいことに、それぞれが高い意識をもって真剣に改善を考え提案してくれています。先日、開業後最多の患者数を数え、スタッフ一人ひとりに感謝の気持ちを伝えましたが、チーム全員で患者さまを支える、理念に沿った運営ができていることを実感しています。
スタッフ採用での判断基準はあったのですか。
仕事のスキルや経験も大切ですが、このクリニックのイメージに合う方かどうかで判断しました。柔らかな雰囲気を大切にしたコミュニケーションがとれ、相手の目を見てしっかりと話せるという基本は大事にしたつもりです。
先ほど診療放射線技師の方をお見掛けしましたが、口調も丁寧で患者さまに与える安心感が大きいように思われました。小畑からは、リハビリスタッフも優秀な方が集まったと聞いています。
放射線技師の場合、レントゲン室という密室が仕事場ですから、呼ばれた際に患者さまは少し緊張して構えてしまいます。当院では特に女性患者さまに配慮し、部位によってはレントゲン撮影時に看護師が立ち会うようにしていますが、採用した技師は話しかける口調も穏やかで、安心してレントゲン室に入っていただけていると思います。リハビリでは3名の理学療法士を採用しましたが、皆物腰が柔らかく非常に丁寧にリハビリを行っており、多くの患者さまが当院でリハビリを受けて良かったと喜ばれています。
内覧会も盛況だったようですね。
初日が約300人。翌日は雨天にもかかわらず約200人にお越しいただきました。更地の段階から掲げた仮看板や、折込みチラシとポスティングを比較的広域で実施した効果でしょうか、まるで「この日を待ってました!」と言わんばかりの反響で、私たちのマーケティングが間違っていなかったことが確認できました。その雰囲気のまま開業初日を迎え、朝から相当数の患者さまが並ばれているのを見て、ようやく安堵しました。現在2カ月目ですが、今でもチラシを持って来院される方が結構いらっしゃいますので、広告効果が大きかったと考えられます。
先生の専門分野の一つである脊椎疾患について、クリニックでもその強みを発揮できそうですか。
整形外科外来でもっとも多いのが、脊椎疾患の主症状である腰痛の患者さまです。私がその分野の専門医であることは患者さまに対するアピールポイントの一つになるとは思っています。痛みに対してどうアプローチするかは、脊椎手術などの経験から外科的な視点からも説明できることがありますし、患者さまの生活習慣など個別性に配慮した治療法やリハビリを提案することもできます。とくにリハビリに活かせることのメリットは大きいと思っています。
骨粗鬆症など症状の悪化を防ぐ早期発見・早期医療介入や予防という概念を根付かせるための啓蒙はどうお考えですか。
そこもクリニックだからこそやらなければならないことでしょう。総合病院で実践しようとしても、専門外来でも作らない限り丁寧な説明までは手が回らないですし、検査までの間隔が空いてしまったり……、医師としては歯痒いのですが、なかなか次に踏み出せないというところがあります。やはり保存治療のなかでもしっかりとした予防治療ができることがクリニックという場なのだろうと思います。
開業初月から黒字経営で、好調に立ち上がりました。右肩上がりに患者さまが増えるなかで、先生ご自身のイメージ通りの医療提供ができていますか。
思いのほか多くの患者さまが来られる嬉しい誤算のなかでも、丁寧にしっかり診ていくということは強く心掛けています。ただ一方で焦りのようなものもあって、この先のクリニック運営について、なんでも前倒しに判断して行動していかなければなりません。リハビリの予約も基本的にフルに埋まっていますので、急遽理学療法士を増員することになったほか、電子カルテも追加購入しました。しばらくは落ち着かない日々が続きそうです。
昨今の入院から通院へ、そして在宅への移行という流れのなかで、訪問リハや疼痛管理などの需要が確実に増えると思われますが、将来像として、在宅への対応のお考えはありますか。
地元に根付いた医療をやろうと提言し、これだけの施設を造った以上、介護事業はぜひとも参入していきたいと思っています。かかりつけ医としては、外来の限られた時間の治療だけでなく、患者さん個々の生活背景にまで踏み込ませていただき、全人的なケアに関与していきたいです。そこは在宅診療に限らず、幅広い展開ができればいいかなと思っています。
今回の日本医業総研の開業サポートについて、小畑の採点も含めて忌憚のないご意見をお願いします。
採点なんてとてもできませんが(笑)、担当が小畑さんで本当に良かったと思っています。うまい言葉が見つかりませんが、小畑さんがいてくれたからこそ、理想とする形ができあがりました。コロナ禍で開業時期の延期を余儀なくされるなど、開業に不安がなかったわけではありませんが、小畑さんには私の考えや悩みを事細かに聞いていただいたうえで、常に的確な回答をいただき、本当に心の拠りどころといえる存在でした。
院長 西田光宏 先生
院長プロフィール
医学博士
日本整形外科学会認定整形外科専門医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本脊椎脊髄病学会認定医・指導医
脊椎脊髄外科専門医
2007年 | 慶應義塾大学医学部 卒業 静岡赤十字病院 初期研修 |
2009年 | 慶應義塾大学 整形外科学教室 入局 |
2010年 | 北里大学北里メディカルセンター病院 整形外科 |
2011年 | 足利赤十字病院 整形外科 |
2012年 | 伊勢原協同病院 整形外科 |
2013年 | 静岡赤十字病院 整形外科 |
2015年 | 慶應義塾大学病院 整形外科 |
2016年 | 東京都済生会中央病院 整形外科 |
2018年 | 済生会横浜市南部病院 整形外科 |
2021年 | けいゆう病院 整形外科 |
2022年 | 西田整形外科クリニック 開設 |