◆皮膚科 編
皮膚科は美容領域を強みとする開業が増える傾向にあります。自費の美容皮膚科は需要もありますし、単価も自由に設定できますが、基本は保険診療で医療機関としての信用を積み上げ、最低限の経費をヘッジしたうえで徐々にそのウエイトをコントロールすべきというのが私どもの基本的な考えです。保険での診療単価が低いだけに、集患を高めると同時に、診療の流れを滞らせないオペレーションが重要です。
≪ポイント≫
・保険診療と美容領域等の自費診療のバランスをどう設定するか
・保険診療における診療単価が低い診療科だけに、十分な患者予測数が見込める立地選定が最重要課題
・保険診療の限りにおいては、必ずしも看護師の配置を必要としない
③職員配置・採用計画
皮膚科の職員配置、採用計画については、自費診療(美容領域)に力を入れていきたい場合は、受付や看護師も健康的で肌のトラブルのないスタッフ、さらに美意識の高い人材を揃えることが望まれます。美容形成とはニーズが異なりますが、女性受診者が、自分もこうありたいと思えるスタッフを揃えることが自費診療の営業につながる側面も少なくありません。そのため、診療所に導入する美容機器を、スタッフの福利厚生として、割引価格や場合によっては無料で提供することを、求人条件のアピールポイントに、美意識の高いスタッフの確保に努めているケースもあります。
看護師については、常時1~2名体制を確保すれば問題ありません。ただし、看護師採用は、どの診療科でも困難なことから、病院勤務中に、開業後に採用したい看護師の目途を立てておくことも検討手段の一つです。特に、一緒に働いたことがある看護師の場合は、院長先生の診療のスタイルを熟知していますので、患者数が多くなる傾向になる皮膚科では、診察中に次の患者さんを隣の診察室に呼び入れたり、先生が指示を出す前にオーダーが出そうな処置の準備に入ることができるなど、業務の効率化に大きく寄与します。
受付スタッフは、常時2名体制を確保すれば、患者さん対応や電話応対は十分です。ただし、医療機関での勤務経験者を1人は確保したい場合は、病院勤務中に、医療事務能力や接遇能力に長けた人がいれば、開業後の採用を打診することも検討手段の一つです。
また、皮膚科は保険診療の診療単価が他の診療科に比べ低い分を多くの集患で補う傾向にあるため、医療クラークなど電子カルテの入力作業を専門に行うスタッフを配置するケースも見受けられるようになっています。つまり、先生の言葉をその場で的確に入力する必要があり、専門用語への理解とPCの入力作業に高いスキルを発揮する人材が求められることになります。
そのほか、看護師、受付スタッフに共通する内容ですが、多くの患者さんを集めないと採算が合わないという診療科の特徴もあり、手際よく運営する能力が求められることから、弊社の開業支援事例では比較的年齢の若いスタッフを採用するケースが見られます。
④プロモーション戦略
皮膚科は、広域からの集患が必要となりますので、プロモーション戦略はホームページでの情報提供やインターネット機能を最大限に活用した広告が必要となります。
(1)開業前のプロモーション
診療所開業を地域に知っていただくための一番の手段は、住民の皆様にお越しいただき、診療所の雰囲気や院長、スタッフの人柄などを直接感じていただくことです。その場での好印象から、すでに地域への口コミがスタートします。そのお披露目の機会となるのが、開業直前の週末、原則的に土曜日・日曜日の2日間を利用して実施する内覧会です。
開業直前の内覧会の実施は、多くの診療科で浸透していますが、内覧会の告知のために、一次診療圏(徒歩通院圏内、半径約500m)には、診療所のリーフレットのポスティングを、二次診療圏(開業エリアの競合環境や人口により変動。概ね半径1kmから2km圏内)には新聞折込みチラシによる告知を行うことが一般的です。
また、内覧会では、皮膚のケアや美容に関心が高い方へのサンプル化粧品など、患者さん候補となる方に喜んでいただけるノベルティグッズを準備する工夫が効果的です。
医療機関には広告規制があることから、開業の告知は最大の広告機会といえます。認知度を一気に高めるためにも、開院時に積極的なアピールをしたいところです。
(2)開業後のプロモーション
開業後については、自院ホームページでの情報配信が主なプロモーション活動となりますが、ビジュアルや診療説明など、医院経営のベースとなる保険医療と美容などの自費診療で表現のメリハリを強くした方が効果的です。
皮膚科のターゲットとなる患者さんのなかでも、若い女性はインターネットで自身の症状や治療目的に的確に対応してくれそうな診療所を探す傾向があるため、インターネット検索で自院ホームページが上位に露出できるような対策が効果的です。私どもの開業支援事例においても、開院当初からインターネットの専門広告代理店に依頼して「Google」や「Yahoo」検索エンジンに対する「リスティング広告」を実施。来院につながると思われるキーワードを数百個設定し、そのキーワードで検索した方に自院のホームページを見てもらえる動線をネット上に作ることで、一定の成果を上げています。
最近では、先生自身がホームページの更新を簡単にできるシステムを特徴にした商品もあり、私どもが開業をご支援した先生のなかにも、定期的にブログを更新しておられる方がいらっしゃいます。また、自院のホームページ管理画面をこまめにチェックされ、コンテンツ別の閲覧数の変化などから、掲載情報の深堀りなどコンテンツの充実を図っておられる先生もいらっしゃいますが、「Google」などでの検索順位を上位に押し上げることは、広報活動としてのホームページ運用の費用対効果を高める意味においてもとても有効な取り組みです。
そのほか、美容領域に力を入れる皮膚科診療所では、スタッフが広告塔となって、美容機器や化粧品の使用体験を話すことが営業につながるので、スタッフ教育や美容機器、化粧品サンプルのスタッフへの提供がプロモーション活動になる側面もあります。
~株式会社日本医業総研 発行 診療所開業 ここで差がつく診療科別開業成功のポイント より~
★次回は 眼科の経営戦略・立地選定 を掲載予定です
<過去のブログ>
消化器内科 ①経営戦略・立地選定 2023/6月更新分
消化器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/8月更新分
循環器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/11月更新分
呼吸器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/2月更新分
糖尿病内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/5月更新分
小児科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/8月更新分
整形外科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/11月更新分
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