◆皮膚科 編
皮膚科は美容領域を強みとする開業が増える傾向にあります。自費の美容皮膚科は需要もありますし、単価も自由に設定できますが、基本は保険診療で医療機関としての信用を積み上げ、最低限の経費をヘッジしたうえで徐々にそのウエイトをコントロールすべきというのが私どもの基本的な考えです。保険での診療単価が低いだけに、集患を高めると同時に、診療の流れを滞らせないオペレーションが重要です。
≪ポイント≫
・保険診療と美容領域等の自費診療のバランスをどう設定するか
・保険診療における診療単価が低い診療科だけに、十分な患者予測数が見込める立地選定が最重要課題
・保険診療の限りにおいては、必ずしも看護師の配置を必要としない
①経営戦略・立地選定
皮膚科での経営戦略と立地選定では、保険診療と美容などの自費診療のウエイトによって異なった戦略を立てることになります。
(1)美容皮膚科に力を入れる場合
皮膚科における昨今の開業のトレンドは、女性ニーズの高い自費診療(美容)への積極的な取り組みです。ただし、事業の成功と継続性を第一に考えた場合、開業の初期ステージは保険診療だけで固定経費をカバーでき、利益を出せるまでの経営基盤を固め、保険医療機関としての信用と患者さんとの信頼関係を構築したうえで、自費診療を提案していくという流れが開業支援における私どもの基本的な考え方です。
そのため、開業エリア選定や物件選定にあたっては、保険診療での皮膚科の診療圏調査結果で、事業の固定費を賄えるだけの患者数予測が見込める場所が前提となります。
経営戦略としては、テレビCMなどで有名な自費診療のみを行う美容医療のように、イメージ戦略で大々的に広告を行い、ターミナル駅駅前の便利な立地戦略で患者さんを集めるのではなく、一般的な保険診療の皮膚科に通院される患者さんの中から、丁寧に美容皮膚科ニーズを掘り起こし、そのニーズに的確に応えていくことが重要です。
ただし、料金設定にもよりますが、美容領域は経済的な負担感が大きいため、やはり高所得層の多いエリアで、働く女性をコアターゲットに、広域から集患できるエリアを候補とすることで、医療機器の投資に見合った収入が期待できます。
(2)保険診療中心で開業する場合
高額な医療機器への投資や、美容領域に抵抗があり、保険中心の皮膚科を目指す場合は、診療報酬単価が低いことから、診療圏調査において、十分な患者予測数を見込めることが最重要課題となります。
弊社の開業支援では、本格的な診療圏調査による保険診療の潜在患者予測数を算出する過程において、開業候補地の競合医院の現地調査を行いますが、皮膚科を標榜しているものの、サブ的な診療科として位置づけている診療所を良く見受けます。こうした競合医療機関があるなかでの専門診療所の開業では、専門医を受診したいという患者心理を勘案します。つまり、サブ的な診療科として皮膚科を標榜している医療機関を皮膚科専門診療所としてカウントして潜在患者数を割り患者予測数字を出すのではなく、開業後の患者動向を見据えた診療圏調査を実施し、より具体性のある潜在患者数をもとに開業立地を選定していくことがポイントとなります。
皮膚科は、治療結果について患者さん自身が実感しやすい診療科ですので、医師の力量で、しっかり診断して治療するという地道な取り組みが、口コミで患者数を集めていくことにつながります。また、郊外立地に皮膚科専門診療所が少ない地域も多いことから、保険診療中心で十分な患者数を見込むことが期待できると考えられます。
~株式会社日本医業総研 発行 診療所開業 ここで差がつく診療科別開業成功のポイント より~
★次回は 皮膚科の事業計画 を掲載予定です
<過去のブログ>
消化器内科 ①経営戦略・立地選定 2023/6月更新分
消化器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/8月更新分
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