◆小児科 編
公費負担によるワクチン接種や、比較的高い診療保険点数が維持されている小児科ですが、長期的視点に立てば少子化に伴う市場の成長性に不安定な先行きも予測されますので、10年後、20年後を見越した立地選定が非常に重要になります。また、競合の多い診療科だけに、患児や保護者にとっての安心感、受診への利便性といったサービス体制を整備することが、差別化の大きな要因となります。
≪ポイント≫
・15歳未満の人口数が一定数維持されている地域での開業。持ち家率が低く、賃貸住宅、社宅等子育て世帯の流動性に富む地域が狙い目
・保護者(母親)の利便性に配慮した、駐車の容易な駐車場の確保と、診察予約システムの導入
・利用者の離散を防ぎ囲い込みにもつながる、スタッフ接遇や子育て支援といったソフト面を強化
①経営戦略・立地選定
小児科診療所の開業にあたっては、年齢で患者さんが区切られますので、15歳未満の人口が一定数維持される地域での開業(立地選定)が望まれます。
出生数の低下には下げ止まりの兆しが見られるものの、総人口の一貫した減少の食い止めには至らない現代において、子育て世代が流入するニュータウンや転勤族の社宅、定期的な異動のある公務員宿舎などが事業の持続性・継続性が求められる診療所としては理想的で、逆に、診療圏内人口の年齢層が徐々に上がっていく持ち家エリアは避けたいところです。
小児科の経営環境のトレンドとしては、ワクチンなどの予防接種の義務化や費用の公費負担が後押しとなり、小児科診療所の事業構造として自費収入の占める割合が増えてきていることから(保険6:自費4[弊社調査値])、保険診療についても受診ハードルが下がっており、集患し易くなっています。また、少子化対策として、小児医療に関する保険点数の設定が厚くなってきているのも特徴ですので、他科と比較すると収益性、利益率が高い診療科目となっています。その分、新規開業希望の先生方にとっては開業への失敗リスクが低く受け止められる傾向があり、新規開業件数が多くなってきています。
つまり競合環境が厳しくなりつつある診療科目だからこそ、経営戦略をしっかりと取りまとめることが重要です。
具体的には、子どもを通院させる保護者の利便性に配慮することが必要になるため、駐車スペースの確保(2方向から駐車スペースに出入りできるなどの駐車のしやすさや、駐車台数の確保)、スマートフォンでの簡単な操作で都合の良い時間帯に診療予約できる順番予約、もしくは診療時間予約システムの導入、子どもを飽きさせないための待合室内でのキッズスペースの確保(アニメなどのDVD上映含む)、感染症予防のための隔離室の配置は、他の診療所との差別化のために十分な検討が必要な施策となります。
また、保護者心理が集患に影響する診療科目であり、かつ、医療費の一部が公費負担となるケースがあることなどから、診療所乗り換え(いわゆるドクターショッピング)のハードルが低いことも特徴としてあげられます。前述のハード面のみではなく、院長、看護師、受付医療事務の接遇応対などのソフト面を強化することが、保護者の不安心理を軽減させ、患者さん(保護者)を囲い込むことにつながると考えられます。
そのため、定期的な患者満足度(不満足度)アンケートの実施により、患者ニーズの把握と診療所のサービス体制の現状把握を行い、その結果に基づいて、接遇研修を定期的に実施するなどの、継続的な取り組みが、他院との差別化に有効な戦略と考えられます。
また、他の小児科診療所との差別化内容をしっかりアピールし、子育て支援やアレルギー疾患への強みなど、保護者から選ばれるための施策も有効な取組みとなります。
そのほか、立地選定に関しては、ベビーカーに子どもを乗せて通院する保護者心理を考慮すると、日常の生活動線上(生活必需品を購入するスーパーなどの近く)の視認性の良い物件で、駐車台数を確保できることが重要ですが、先に述べたように、長期的な視点で見てみると先行きが不安定な診療科目でもあり、開業立地を誤ると、途中で移転の必要性が生じるということも念頭に置いておく必要があります。
~株式会社日本医業総研 発行 診療所開業 ここで差がつく診療科別開業成功のポイント より~
★次回は 小児科の事業計画 を掲載予定です
<過去のブログ>
消化器内科 ①経営戦略・立地選定 2023/6月更新分
消化器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/8月更新分
循環器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/11月更新分
呼吸器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/2月更新分
糖尿病内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/5月更新分