医療事務の基礎知識(23)

皆さんこんにちは。今回は、前回の続きです。在宅療養指導管理料のうちの1つである「在宅自己注射指導管理料」を算定している患者の場合に注意する点と、注射をするための材料等加算について解説します。

 

■在宅自己注射指導管理料を算定の患者には

在宅自己注射指導管理料を算定している患者の外来受診時に、当管理に係る薬剤(インスリン製剤等)を使用した「皮内、皮下 及び筋肉内注射」「静脈内注射(点滴含む)」の費用は、薬剤料も含めて算定できません。ただし、緊急時に受診した場合は算定可能です。この場合は、レセプトの摘要欄に緊急時の受診であることを記載することとなっています。

ですが、当管理料を算定している患者の訪問診療時(C001在宅患者訪問診療料(Ⅰ)またはC001-2在宅患者訪問診療料(Ⅱ)を算定する日)の「皮内、皮下及び筋肉内注射」「静脈内注射」「点滴注射」 の費用は、薬剤料や材料料も含めて算定できません。

外来受診時、訪問診療時のどちらであっても、在宅自己注射指導管理料と関係のない薬剤を注射した場合には、注射の実施料(手技料)も薬剤料も通常通り算定できます。

 

■在宅療養指導管理材料加算について

療養中の患者が在宅で特定の医療行為を行いながら日常生活を送られている場合の指導と管理の費用として算定する在宅療養指導管理料には、その医療行為を行うために必要な医療材料費に対しても一部は加算点数での算定が認められています。在宅自己注射指導管理料に加算できる主なものを挙げてみます。(C150 血糖自己測定器加算、C151 注入器加算、C153 注入器用注射針加算)

例えば在宅で自己注射を行う場合は、薬剤のほかに注射器や注射針などの材料を支給します。これらの費用は加算点数で算定することができますが、算定は必ず在宅自己注射指導管理料を算定したときに管理料に加算して(管理料と一緒に)算定する決まりになっています。加算分だけを単独で算定することはできません。

 

例題:2月1日に在宅自己注射指導管理料と、30日分のインスリン製剤、30日分の血糖測定

            センサーチップを処方

            2月28日にも在宅自己注射指導管理料と、30日分のインスリン製剤、30日分の血糖測定

            センサーチップを処方

 

算定:2月1日 在宅自己注射指導管理料 + 血糖自己測定器加算 + インスリン製剤30日分

      2月28日 インスリン製剤30日分

 

在宅自己注射指導管理料の算定は暦月1回と定められており、加算の算定は管理料を算定したときに限られているため、28日は算定できません。そのため、28日は薬剤料のみの算定になります。

 

■C150 血糖自己測定器加算

血糖自己測定器加算とは、インスリン製剤など在宅自己注射を行っている患者のうち、血糖値の変動が大きい者または12歳未満の小児低血糖症患者に対して、医師が血糖のコントロールを目的として血糖試験紙やセンサーチップなどを給付し、自己測定をさせて、その記録に基づき指導を行った場合に算定できる加算です。月に何回測定するかによって点数が異なり、算定は「3ヶ月に3回に限り、第1款の所定点数(管理料)に加算する」と定められています。

 

血糖自己測定器加算

 

1.月20回以上測定する場合 350点     加算対象患者

イ) インスリン製剤又はヒトソマトメジンC製剤の自己

         注射を1日1回以上行っている患者
   (1型糖尿病の患者・膵全摘後の患者以外)
ロ) インスリン製剤の自己注射を1日1回以上

          行っている患者
   (1型糖尿病の患者・膵全摘後の患者)
ハ) 12歳未満の小児低血糖症の患者
ニ) 妊娠中の糖尿病患者又は妊娠糖尿病の患者
   (別に厚生労働大臣が定める者*)

2.月30回以上測定する場合 465点 
3.月40回以上測定する場合 580点 
4.月60回以上測定する場合 830点 
5.月90回以上測定する場合 1,170点 

イ) インスリン製剤の自己注射を1日1回以上行って

          いる患者
   (1型糖尿病の患者・膵全摘後の患者)
ロ) 12歳未満の小児低血糖症の患者
ハ) 妊娠中の糖尿病患者又は妊娠糖尿病の患者
   (別に厚生労働大臣が定める者*)

6.月120回以上測定する場合 1,490点 

7.間歇スキャン式持続血糖測定器による

       もの

1,250点  強化インスリン療法を行っている患者又は強化インスリン療法を行った後に混合型インスリン製剤を
1日2回以上使用している患者

 

 *別に厚生労働大臣が定める者とは、妊娠中の糖尿病患者または妊娠糖尿病の患者であって、周産期における合併症の危険性が高い者(血糖の自己測定を必要としたものに限る)

 

 

■3ヶ月に3回とは
病状が安定していて血糖のコントロールが良好であるような場合は、2~3ヶ月に1回の受診という患者さんもいらっしゃると思います。このような患者さんには、インスリン製剤や血糖測定のセンサーチップなども2~3ヶ月分処方されますね。注射薬であるインスリン製剤は処方の都度算定することができますが、血糖測定のセンサーチップ等はまとめて渡していても、算定は受診時に管理料と一緒でなければ算定できません。このため受診して管理料を算定する際に、過去に渡した分または未来の使用分というかたちで3ヶ月に3回まで算定が認められています。

 

■例題で確認

例題:2月1日に在宅自己注射指導管理料と、30日分のインスリン製剤、30日分の血糖測定

            センサーチップを処方
            2月28日にも在宅自己注射指導管理料と、30日分のインスリン製剤、30日分の血糖測定
           センサーチップを処方 (3月に使用する分) ※ 3月は受診なしとします
   4月1日に在宅自己注射指導管理料と、30日分のインスリン製剤、30日分の血糖測定

           センサーチップを処方

 

算定:2月1日 在宅自己注射指導管理料 + 血糖自己測定器加算(×1回) + インスリン製剤30日分
      2月28日 インスリン製剤30日分

            4月1日 在宅自己注射指導管理料 + 血糖自己測定器加算(×2回) + インスリン製剤

                              30日分 (血糖自己測定器加算は、2月28日と4月1日の2回分を算定する)

 

このように、血糖自己測定器加算は、2月3月4月の3ヶ月で、3回の算定になります

 

■気をつけて
毎回2ヶ月分ずつ処方をしているような場合は、注意することがあります。

 

例題:2月1日に在宅自己注射指導管理料と、60日分のインスリン製剤、60日分の血糖測定

           センサーチップを処方
            4月1日に在宅自己注射指導管理料と、60日分のインスリン製剤、60日分の血糖測定

           センサーチップを処方

 

算定:2月1日 在宅自己注射指導管理料 + 血糖自己測定器加算(×2回) + インスリン製剤60日分  

           (血糖自己測定器加算は、2月3月分)
     4月1日 在宅自己注射指導管理料 + 血糖自己測定器加算(×2回) + インスリン製剤60日分  

           (血糖自己測定器加算は、4月5月分)

 

このような場合、血糖自己測定器加算は、2月3月4月の3ヶ月で4回の算定になってしまいますのでご留意ください。

 

 

■C151 注入器加算

「注入器」とは、自己注射適応患者(性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤の自己注射を除く)に対するディスポーザブル注射器(注射針一体型に限る)、自動注入ポンプ、携帯用注入器または針無圧力注射器のことをいいます。これらを処方した月に限り算定ができます。(単に注入器の使用を行っているというだけでは算定はできません)

 

■注入器の種類
① ディスポーザブル注射器  通常の注射器で1回ごとに薬液を入れて使用し、その後に破棄します。
② 万年筆型注入器  注入器にカートリッジ製剤をセットするタイプで、ダイアルで予め設定した注射量を注射することができます。毎回針だけを取り換えれば複数回使用できますので、針加算は別に算定できます。
③ 注入器一体型キット製剤  カートリッジ製剤が予めセットされているタイプで、複数回使用できますがカートリッジを使い切ったら破棄するので注入器の費用は薬価に含まれています。針は毎回使い捨てのため注射針加算は別に算定できます。
④ 針付注入器一体型キット製剤(1回で使用) 注射器に針も薬液も含まれているため、注入器加算も注入器用注射針加算も算定できません。1回のみの使用で使い捨てとなる製剤です。

 

■C153 注入器用注射針加算
注入器用の注射針を処方した場合に算定できます。針付一体型のキット製剤、または針無圧力注射器を処方した場合は算定できません。

 

在宅自己注射をするためには、薬剤や注射器などのほかにも消毒用のアルコール綿や絆創膏を渡しますが、上記のような診療報酬上の加算等として個別に設定されているもの以外の費用は、「在宅療養指導管理料に含まれる」との決まりから、別に算定することはできません。

 

 在宅自己注射指導管理に伴う「注入器」「注射針」の費用の算定

 

注入器の種別 医療機関が支給 院外処方による支給の可否等 対象となる薬剤の単位(例)
注入器加算 注射針加算
ディスポーザブル注射器 × ・「ディスポーザブル注入器」
      院外、院内いずれも支給可
40単位1mL
バイアル
万年筆型注入器

・「注射針」は、院外、院内

      いずれも支給可
・「注入器」は、院内でのみ支給可

300単位1筒
注入器一体型キット製剤 ×

・「注射針」は、院外、院内

      い ずれも支給可
・「注入器」の費用は薬価に含ま

   れている

300単位
1キット

 

【備考】

  1. 院外処方により支給できる器材は、調剤報酬点数表に定められている「ディスポーザブル注射器」と「万年筆型注入器用注射針」のみです。
  2. 院外処方でディスポーザブル注射器、注射針を支給した場合は、注入器加算、注入器用注射針加算は算定不可です。
  3. 「注入器加算」の対象となる上記のディスポーザブル注射と万年筆型注入器以外の注入器については省略します。

 

■おわりに

2回にわたって在宅自己注射指導管理料とそれに伴う加算項目について書いてみましたがいかがでしょうか。自己注射を行っている患者さんはクリニックでもいらっしゃいますし、さまざまな診療科で算定されている項目だと思いますので参考にしていただけますと幸いです。

また、実施に伴う廃棄物の適切な処理方法等についても、併せてお伝え(指導)することが大切ですね。

                                                     

 


 

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