医療事務の基礎知識(17)

皆さんこんにちは。今回は、検体検査を実施したときに、検査当日中にその結果を文書で患者に説明し、結果に基づく診療が行われた場合に算定できる「外来迅速検体検査加算」について解説します。

 

■外来迅速検体検査加算

最近では院内に検査機器を置いているクリニックもありますので、これによって外来迅速検体検査加算を算定されている医療機関もあると思いますが、外来迅速検体検査加算の算定ができるときと、できないときを勘違いされていませんか?算定もれで損をしないように、ここで確認しておきたいと思います。

 

外来迅速検体検査加算が算定できる検査項目は厚生労働大臣によって定められています(下記表を参照)。

点数は1項目につき10点で、1日につき5項目を限度として算定できます。
 

1回の検査で、外来迅速検体検査加算が算定できる項目だけを検査した場合は、行った検査項目すべての結果が検査した同日内に文書で報告できないと算定はできません。しかし、外来迅速検体検査加算が算定できる項目と算定できない項目を併せて行った場合には、外来迅速検体検査加算が算定できる項目だけを検査した同日中に文書で報告できれば算定可能です。

 

■要注意

算定できるのは5項目が限度ですが、対象となっている検査項目はすべて検査同日内に文書で説明できないといけないところが要注意です。対象検査について、検査の同日内に結果が出るものと出ないものが混在する場合は、全ての対象項目について算定不可となってしまいます。

 

ここでの注意点は、生化学(Ⅰ)のまるめ算定の項目のほとんどが対象になっていますので、外注に出した日は算定できないと思い込んでいる方が多いように思います。算定できない項目は、外注に出しても、結果が後日の説明になっても関係ありません。算定できる項目と、算定できない項目を今一度確認してみてください。

 

表:外来迅速検体検査加算の対象項目

区分番号                                                                 検査項目
D000 尿中一般物質定性半定量検査 (※ 院内で行った場合に算定)
D002 尿沈渣(鏡検法)  (※ D002-2尿沈渣のフローサイトメトリー法は対象外です
D003 糞便検査「7」糞便中ヘモグロビン
D005

血液形態・機能検査
「1」赤血球沈降速度測定(ESR)

「5」末梢血液一般検査

「9」ヘモグロビンA1c(HbA1c)

D006

出血・凝固検査
「2」プロトロンビン時間(PT)

「11」フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)定性・半定量・定量

「20」Dダイマー (※ 「15」Dダイマー定性と「17」半定量は対象外です

D007

血液化学検査
「1」総ビリルビン、総蛋白、アルブミン、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、アルカリホスファターゼ(ALP)、コリンエステラーゼ(ChE)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT)、中性脂肪、ナトリウム及びクロール、カリウム、カルシウム、グルコース、乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)、クレアチンキナーゼ(CK)  

(※ 血糖(グルコース)は対象ですが、血糖の試験紙法は対象外です)

 

「3」HDL-コレステロール、総コレステロール、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)

「4」LDL-コレステロール

「18」グリコアルブミン

D008

内分泌学的検査
「9」甲状腺刺激ホルモン(TSH)

「15」遊離サイロキシン(FT4)、遊離トリヨードサイロニン(FT3)

D009

腫瘍マーカー
「2」癌胎児性抗原(CEA)

「3」α-フェトプロテイン(AFP)

「6」前立腺特異抗原(PSA)、CA19-9

D015 血漿蛋白免疫学的検査
「1」C反応性蛋白(CRP) (※ CRPの定性は対象外です
D017 排泄物、滲出物又は分泌物の細菌顕微鏡検査
「3」その他のもの (※ 「1」と「2」は対象外です

 

 

 

 

■例題で確認

例1) すべての検査が外来迅速検体検査加算の対象検査の場合

    (検査同日内にすべての検査結果に対して文書を交付し説明を行わないと、

      外来迅速検体検査加算は全く算定できません)

 

 

   ①尿中一般物質定性半定量検査

   ②末梢血液一般検査

   ③ヘモグロビンA1c(HbA1c)

 

               ↓             ↓    

・検査当日に、①②③すべての

 検査結果を説明し文書を交付

 

・ 検査当日に①のみ検査結果を説明し文書を交付 

・ ②③の検査結果は後日説明

              ↓             ↓    

   外来迅速検体検査加算 

   10点×3が算定できる

 

   説明を行っていない検査があるため

   外来迅速検体検査加算は算定できない

 

右側の場合、①のみ検査結果を説明し文書を交付したからといって、1項目10点だけを算定することはできません。

ここでは3項目の検査を例題としていますので、すべての結果を文書を交付して説明したら「10点×3」で、3項目のうち、1項目でも検査当日中に検査結果の説明ができない項目がありましたら「0点」になります。

 

例2) 外来迅速検体検査加算の対象検査と対象外の検査が混在する場合

    (外来迅速検体検査加算の対象となっている検査に対してのみ文書を交付して説明を

      行えば、外来迅速検体検査加算は算定できます)

 

 

   ①尿中一般物質定性半定量検査

   ②アルブミン定量(尿)(対象外検査)

   ③ヘモグロビンA1c(HbA1c)

 

              ↓             ↓    

・検査当日に、①②③すべての  

 検査結果を説明し文書を交付

 

・ 検査当日に①③の検査結果を説明し文書を交付 

・外注のため②の検査結果は後日説明

              ↓             ↓    

 

外来迅速検体検査加算10点×2が算定できる 

②は対象外の検査のため説明を行っても行わなくても関係ありません

 

■算定前にご確認ください

(1)入院中の患者以外に算定できる項目です。(外来受診後、引き続き入院となった場合は例外あり)

(2)時間外緊急院内検査加算を算定した場合は、外来迅速検体検査加算は算定できません。

(3)説明文書の様式に定めはありません。検査結果がわかり説明を行うのに十分なものであれば様式は任意となっています。

(4)糖尿病患者など手帳を所持している方の場合は、その手帳に検査結果を記載した場合でも算定はできます。ただし、一部の結果のみではなく、すべての検査結果を記載する必要がありますのでご留意ください。

(5)院内で実施した検査であっても、院外で実施した検査であっても、検査当日中に結果が判明して算定要件を満たせば、外来迅速検体検査加算は算定できます。

(6)午前中の検査で、説明は午後になっても、同一日中であれば算定は可能です。(この場合、診察料の算定は1回になります)

(7)複数の診療科で実施した場合でも、診療科ごとに5項目ではなく、併せて1日につき5項目を限度の算定になります。

(8)必要があって、同日に対象となっている同じ検査を2回以上行った場合でも、5項目以内であればそれぞれ算定できます。

(9)1日につき5項目を限度です。日にちが異なれば、その都度算定できます。

(10)クレアチニン(尿)など、生化学Ⅰや生化学Ⅱの項目を血液ではなく尿を検体として検査を実施した場合には、外来迅速検体検査加算は算定できません。

 

■対象外の検査

A群β溶連菌迅速試験定性、インフルエンザウイルス抗原定性、アデノウイルス抗原定性などは、検査の当日中に結果が判明しますが、算定の対象検査として認められてはいませんので外来迅速検体検査加算は算定できません。

また、これらの検査は、時間外緊急院内検査加算の対象外でもありますのでご留意ください。(検査の結果次第では、処方薬などの対応も変わってくる可能性があると思うのですが…、なぜでしょうね?)

 

 


 

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