皆さんこんにちは。今回は、前回の処方箋料の続きになります。
処方箋料は、要件により3通りの点数があります。前回はその中の「1」 28点になる場合について解説しましたので、今回はその続きで処方箋料の「2」 7種類以上の内服薬の投薬についてなどを解説いたします。
■処方箋料
- 3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、3種類以上の抗うつ薬、3種類以上の抗精神病薬又は4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投薬(臨時の投薬等のもの及び3種類の抗うつ薬又は3種類の抗精神病薬を患者の病状等によりやむを得ず投与するものを除く。)を行った場合
28点
- 1以外の場合であって、7種類以上の内服薬の投薬(臨時の投薬であって、投薬期間が2週間以内のもの及び区分番号A001に掲げる再診料の注12に掲げる地域包括診療加算を算定するものを除く。)を行った場合又は不安若しくは不眠の症状を有する患者に対して1年以上継続して別に厚生労働大臣が定める薬剤の投薬(当該症状を有する患者に対する診療を行うにつき十分な経験を有する医師が行う場合又は精神科の医師の助言を得ている場合その他これに準ずる場合を除く。)を行った場合
40点
- 1及び2以外の場合
68点
通常は、「3」の68点を算定することが一番多いと思います。上記の1でも2でもない場合です。
■「2」を解説
「2」には要件が2つあります。1つは、内服薬を一度に7種類以上処方した場合で、もう1つは、不安若しくは不眠の症状を有する患者に対して1年以上継続して別に厚生労働大臣が定める薬剤の投薬を行った場合です。このような場合には算定できる点数が下がってしまいます。
■処方薬の分類
内服薬 ・・ 医師がいつ、どれだけの量を服用するかを指示して処方した薬のこと (カルテ例:1日3回 毎食後に1錠 7日分 など)
・ 内用薬(飲み薬)
頓服薬 ・・ 患者の症状に応じて、飲んでも飲まなくてもよいとされる飲み薬のこと (カルテ例: 熱が38.5度以上の場合 1回1錠 6時間以上はあけること など)
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・ 外用薬 ・・ 皮膚や鼻の粘膜、目などに直接使用する薬のこと 【外用薬の種類】 点眼薬、点鼻薬、点耳薬、貼付薬、塗布薬(軟膏、クリーム、ローションなど) 坐薬、 吸入薬、口腔用薬(トローチ、うがい薬など) |
■内服薬を一度に7種類以上処方した場合
ここでは、「内服薬を一度に7種類以上処方した場合」とありますので、頓服薬と外用薬はカウントしません。また、「臨時の投薬であって、投薬期間が2週間以内のものを除く」とありますので、14日以内の臨時的な投薬は種類数に含めなくてよいということです。
臨時に投与する薬剤とは連続する投与期間が2週間以内のものをいい、2週間を超える投与期間の薬剤にあっては常態として投与する薬剤として扱います。なお、投与中止期間が1週間以内の場合は、連続する投与とみなして投与期間を計算します。
たとえば、いつも5種類のお薬を飲まれている方に、かぜ薬5日分を2種類追加して処方した場合、内服薬を7種類処方したことになります。しかし、かぜ薬は5日分のため、14日以内の臨時的な投薬になりますので、数には含めなくてよく、この場合は5種類の処方になります。従って処方箋料は68点です。
これを入力した時にコンピューターは、かぜ薬が臨時的な投薬であると判断できないため、自動的に低い点数を算定したり、または「低い点数の方を算定しますか」と聞いてきたりすることもあります。これに気がつかず、機械的に「はい」と操作をされますと、医療機関が損をしてしまうことになるのでご留意ください。
■種類数の数え方
① 錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤については、1銘柄ごとに1種類と数えます
② 散剤や顆粒剤、液剤を混合して服用できるように調剤を行った場合は、1種類と数えます
③ 1剤1日分の薬剤料が 205 円以下(20点まで)の場合は、1種類と数えます
④ 同一銘柄で同一剤形の規格(mg)違いは、1種類と数えます
■詳しく解説
①通常は、銘柄ごとに1種類と数えますが、
②粉薬や液剤などを混合して服用できるように調剤した場合は、その出来上がったものを1種類と数えます。この場合 は、③の1剤1日分の点数に関係なく(21点以上であっても)1種類と数えます。
③同時に服用する薬剤を合わせて1剤といいます。1種類だけで1剤のこともあれば、何種類かを組み合わせて1剤ということもあります。この1剤1日分の薬剤料が205円(20点)までは、薬剤の種類数に関係なく1種類と数えます。205円を超えて21点以上になる場合は、銘柄ごとに1種類と数えます。
注意! 処方日数は関係ありません。
例:アマリール0.5mg錠 1錠 分1朝食後 30日分
エクア錠50mg 1錠 分1朝食後 15日分
(処方日数は異なりますが、どちらも「分1朝食後」と服用時点が同じなので1剤になります)
1剤1日分の薬剤料により数える例題 (内服薬を8種類処方)
例: A錠 (12.8円) 1錠 | 12.8円 × 1錠 =12.8円 | |
B錠 ( 9.8円) 1錠 | 分1朝食後 | 9.8円 × 1錠 = 9.8円 |
C錠 (76.8円) 1錠 | 76.8円 × 1錠 =76.8円 | |
99.4 円 → 10点なので3つ 合わせて1種類です |
D錠 (124.3円) 2錠 | 分2朝夕食後 | 124.3円 × 2錠 =248.6円 |
E錠 ( 47.6円) 2錠 | 47.6円 × 2錠 = 95.2円 | |
343.8円 → 34点なので 銘柄ごとに数えて2種類になります |
②確認(粉薬3剤を混合調剤)
F散 (133.4円) 1g | 133.4円 × 1g =133.4円 | |
G細粒 ( 12.5円) 1g | 分1夕食後 | 12.5円 × 1g = 12.5円 |
H末 (116.0円) 1g | 116.0円 × 1g =116.0円 | |
261.9円 → 26点ですが粉薬を混合 した場合は点数に関係なく (21点以上であっても) 3つ合わせて1種類と数えます |
この例題では、AからHまで8種類の内服薬を処方しましたが、1剤ごとに薬価計算を行うと205円以下(20点まで)は1種類と数えます。また、②に記載したように粉薬を混合して服用できるように調剤した場合は、点数に関係なく、その出来上がったものを1種類と数えますので、今回は1種類+2種類+1種類=4種類と数えます。従って処方箋料は40点ではなく、68点で算定できます。
※ 一般名で処方を行った場合には、該当する医薬品の中で最も低い薬価で計算します
④同一銘柄で同一剤形の規格(mg)違いは、1種類と数えます。錠剤とOD錠は別剤形になりますので
ご留意ください。
例:アマリール 0.5mg錠 1錠
アマリール 1mg錠 1錠 同一銘柄で同一剤形の規格(mg)違いは合わせて1種類と数えます
例:アマリール 0.5mg錠 1錠
アマリール OD錠 1mg 1錠 錠剤とOD錠は別剤形になりますので、これは2種類と数えます
■向精神薬長期処方
不安若しくは不眠の症状を有する患者に対して、1年以上継続して別に厚生労働大臣が定める薬剤の投薬を行った場合には、やはり処方箋料を「2」の40点で算定しなくてはなりません。
当該症状を有する患者に対する診療を行うにつき十分な経験を有する医師が行う場合 又は 精神科の医師の助言を得ている場合、その他これに準ずる場合は、「3」の68点で算定できます。
「別に厚生労働大臣が定める薬剤」とは、薬効分類上の抗不安剤、催眠鎮静剤、精神神経用剤又はその他の中枢神経系用薬のいずれかに該当する医薬品のうち、ベンゾジアゼピン受容体作動薬を1年以上にわたって、同一の成分を同一の1日当たり用量で連続して処方している場合をいいます。 なお、定期処方と屯服間の変更については、同一の1日当たり用量には該当しません。また、以下のいずれかに該当する医師が行った処方又は当該処方の直近1年以内に精神科の医師からの助言を得て行っている処方についても対象外となりますので、「3」の68点で算定できます。
ア 不安又は不眠に係る適切な研修を修了した医師であること
イ 精神科薬物療法に係る適切な研修を修了した医師であること
■まとめ
薬価計算は、PCに任せておけば正しく計算してくれますが、内服薬の種類数の数え方などはPC任せではうまくいかないことが結構あります。日々の業務の中でこのような細かいところまで気をつけることはなかなか難しいと思いますが、近年では突合点検により処方箋料等の査定事例が増えていますので、正しい算定を知って損をしないようにご留意ください。
次回もこの続きです。次回は処方箋料に対する加算や算定の注意事項について解説いたします。一般名処方加算や特定疾患処方管理加算などいろいろありますね。処方箋料は診療科を問わず、ほとんどの医療機関でとてもよく算定されている項目ですから、当たり前すぎて実は細かいことまでは分かっていらっしゃらないことも多いと思います。ぜひ参考にしてください。