今回は、画像診断についてお話をさせていただきます。レントゲン(X線検査)には、単純撮影や造影剤(薬剤)使用撮影、マンモグラフィーなどと、他にもCTやMRIなどありますが、中でも一般的な単純撮影の算定と、CT・MRIについて、気をつけることやポイントをまとめてみたいと思います。マンモグラフィーにもちょっとだけ触れますね。
■単純撮影
一般的にレントゲンと言われたら、この単純撮影を指します。けがをしたときに骨折の有無を調べたり、健康診断のときに胸部のレントゲン写真を撮った場合です。
算定は「写真診断」+「撮影」+「フィルム料(または電子画像管理加算)」の合計になりますが、注意点がいろいろとあります。
単純撮影のときの写真診断料は、点数表では2通りに分かれており、撮影した部位によって異なります。通常頭躯幹といわれます頭や胴体部分を撮影した場合は「イ」頭部,胸部,腹部又は脊椎、四肢を撮影した場合は「ロ」その他です。胴体と四肢をつなぐ肩関節と股関節は「イ」で算定します。
撮影料はアナログ撮影とデジタル撮影で異なります。また6歳未満には加算があります。これにフィルム料を足し合わせて算定しますが、最近ではフィルムに出力せず、撮影した画像を電子化して管理及び保存されていることが多いと思います。その場合は、フィルム料のかわりに「電子画像管理加算」を算定します。
■同一部位に同時に2方向以上撮影
単純撮影で同一部位を同時に2方向以上撮影した場合、点数を単純に2倍や3倍にすることはできません。撮影の2枚目から5枚目までは診断料と撮影料をそれぞれ所定点数の100分の50(半分)ずつ足し合わせていき、6枚目以上は算定しないと点数表に記載されています。6枚以上撮影した場合でも5枚目と同じ点数で算定します。
フィルム料は使用した分をすべて算定できますが、フィルム料のかわりに「電子画像管理加算」を算定する場合は、撮影枚数にかかわらず1回の算定になります。
■算定点数一覧表
文章だけでは分かりにくいと思いますので、一覧表でご確認ください。ルールに従い、全てを足し合わせた実際に算定する点数は以下のようになります。
【単純撮影(6歳以上) デジタル撮影 電子画像管理の場合】
(シャッター回数) | 頭躯幹(肩関節、股関節 含む) | 四肢(上肢、下肢) |
1方向 | 210点 | 168点 |
2方向 | 287点 | 224点 |
3方向 | 363点 | 279点 |
4方向 | 440点 | 335点 |
5方向以上 | 516点 | 390点 |
■左右対称の部位の算定
単純撮影で、左右対称の部位(耳・肘・膝など)を両側とも撮影した場合、両側とも悪くて(疾患があって)両側撮影した場合と、片側だけが悪くて(疾患があって)両側撮影した場合とでは、全く同じ撮影でも算定する点数は異なります。両側ともに疾患があって両側撮影を行った場合には、左右別々に算定することができます。片側だけに疾患があって、もう一方は比較対照のために撮影を行った場合には、両側合わせた撮影回数でまとめて1回として算定します(同一部位の同時撮影を行った場合と同じ扱い)。
■例題で確認!
例: 右膝 2方向 左膝 2方向 合計 4枚 撮影の場合 (単純・デジタル撮影) |
※(点数は上の表でご確認ください)
- 「病名:両膝関節炎」 ※ 両側とも疾患がある場合で、両側を撮影
右膝2方向 224点
左膝2方向 224点 ※ 左右、別々に算定できます
合計 448点
- 「病名:右膝関節炎)」 ※ 片側だけ疾患がある場合で、比較対照のために両側を撮影
右膝2方向 335点
左膝2方向 0点 ※ 両膝合わせて4方向で1回として算定します
合計 335点
このように、別々に算定した方が点数は高くなりますので、傷病名を確認して損をしないように算定してください。
■同一の部位
撮影のとき部位的な一致に加え、胸椎下部と腰椎上部のように同一フィルム面に撮影できる範囲を同一部位といいます。胸部と肋骨も同一部位ですし、腰椎と骨盤も同一部位になりますので、算定するときは同一部位を同時に撮影した点数で算定します。ただし、腰椎と股関節はそれぞれの傷病名があれば別々に算定することが認められています。
手部と手指は同じ部位になりますが、手関節は別に算定できます。足も同様で、足部と足趾は同一部位ですが、足関節は別に算定できます。別々に算定するときは、傷病名も別々に記載してください。
■間違えないで
レントゲンを撮るときは撮影部位がカルテに書いてあると思いますが、ここにも注意点があります。単純撮影のとき、カルテに「腰部」と書いてあっても、「腰椎」と書いてあっても同じことで、撮影部位は『腰』になります。傷病名にも「腰部脊柱管狭窄症」や「腰椎椎間板ヘルニア」と腰の病名にはどちらも使われます。
同じような記載でも、これが「胸部」と「胸椎」では部位が異なります。これは撮影のときに、「胸部」は前から撮影しますが、「胸椎」は後ろから撮影を行うため、別の部位として扱われ算定も別々に認められています。ただし、胸部と胸椎(背部でも可)両方の傷病名が必要です。
このように同じ撮影を行っても、傷病名によって算定点数が異なったり、撮影部位の記載のしかたでも点数が変わってきます。カルテをよくみて間違えないように気をつけてください。
■乳房撮影(マンモグラフィー)の場合
乳房撮影は、専用の機器を用いて両側の乳房に対して片側につき2方向以上で撮影を行うことが原則とされていますので、両側で一連として算定をします。ですから、両側に疾患がある場合でも、片側にしか疾患がない場合でも算定点数は同じになります。2020年10月現在、デジタル撮影で562点です。(一連については次で説明します)
■CT、MRI撮影の場合
CTにもMRIにも点数表で撮影料のところに「一連につき」と記されています。この一連につきを分かりやすくいうと、どこ(部位)を何枚撮影しても点数は同じという解釈になりますので、同一日、同時にCTで複数の部位を撮影しても、算定できる点数は同じです。これはMRIでも同じことがいえます。ですが、傷病名欄には撮影をした部位すべての傷病名が必要になりますので、記載もれのないように気をつけてください。診断料は、CTでもMRIでも暦月で1回のみ450点、電子画像管理加算は一連の撮影1回に限り120点です。
■CTとMRIを同日(同月)に行った場合
必要があってCTとMRIの撮影を同一日に両方行った場合には、CTの点数とMRIの点数をそれぞれ算定できます。ですが、どちらも「第3節 コンピューター断層撮影診断料」のグループになりますので、通則2の規定に従い、どちらか一方の撮影料を所定点数の100分の80にして算定することになります。また、診断料は両方合わせて450点を暦月1回限りの算定です。これは同月にCTとMRIを両方行った場合も同じで、後から撮影した方の撮影料を所定点数の100分の80にして算定します。また同月にCTを2回以上、またはMRIを2回以上行った場合も同様です。(撮影部位は同じであっても、異なっていても構いません)
■診療所での注意点
診療所でもCTやMRIを備えているところは増えてきています。中でもより詳しい診断を行えるようにと、CTでは 64列以上のマルチスライス型機器を、MRIでは3テスラ以上の機器を導入されている診療所もあることと思いますが、診療所の場合にはせっかくよい機器を備えられましてもCT64列以上の1,000点(または1,020点)、MRI3テスラ以上の1,600点(または1,620点)は算定できません。これらの点数は、算定要件の一つに「画像診断管理加算2の施設基準を満たしていること」とあり、その画像診断管理加算2の施設基準の中に「放射線科を標榜している病院であること」と記載されていますので、残念ながら診療所では算定ができないことになります。この場合、CTは900点、MRIは1,330点で算定します。ちょっぴり損をした気分になりますね。
■レセプト点検ポイント
レントゲンの算定をした場合、レセプトでは撮影部位の傷病名があるか、左右を間違えていないか、撮影回数に誤りはないかなどを確認します。前述しましたとおり、胸部と胸椎、または足部と足関節のように一文字異なっただけでも傷病名が変わってしまいますし、撮影部位の漢字を間違えても減点に繋がります。点数は電子カルテで計算されますが、入力は人が行うわけですから、入力するときから間違えないように気をつけることはもちろんですが、算定についてのルールも理解されていた方がいいと思います。ぜひ参考にしてください。