医療事務の基礎知識(4)

今回は、医療保険制度に関する基礎知識についてお伝えします。レセプトを提出後、診療報酬の窓口負担分を差し引いた残りの医療費(療養の給付)が支払われるまでの仕組みなどがわかると思います。

 

診療報酬とは、医療機関が患者さんを診療したときに受け取る報酬の事で、これは国が点数によって定めています。診療行為ごとに決められている点数は、基本的には2年に1回見直しが行われますが、これを点数改定といい、今年(2020年)も4月から改定された部分がいろいろと(内容、解釈、点数など)変更になっています。

 

■診療報酬の種類

診療報酬点数には大きく2種類あり、1つは個別出来高払いです。これは処置や検査などの診療行為や薬剤の種類ごとに点数や金額が決められているので、 実際に行った医療行為の診療点数を合計して医療費を計算します。このとき1点=10円で計算します。診療所の外来では、この個別出来高払い方式が一般的だと思われます。

そしてもう1つが包括払いです。小児の年齢や病気の分類ごとに1日単位で点数が決められているものもあり、小児科では「小児科外来診療料」といって包括方式(まるめ算定)を採用している医療機関も多いと思います。

 

■診療報酬の仕組み

診療報酬は全額を患者さんが支払うわけではなく、患者さん3割(2割または1割の場合もある)、保険者7割(8割または9割の場合もある)で負担されています。医療行為ごとの合計点数を金額に変換し、その一部を医療機関の窓口で患者さんから徴収します。そして、残りの医療費は医療機関がレセプト(診療報酬明細書)を使ってそれぞれの保険者に請求します。

 

■レセプト請求とは

医療機関は、月末締めで作成した患者ごとの1ヵ月のレセプトを、翌月10日までに審査支払機関である「社会保険診療報酬支払基金(支払基金)」または「国民健康保険団体連合会(国保連合会)」に提出します。社保と公費単独(生活保護など)分を支払基金、国保と後期高齢者の分は国保連合会へ提出します。審査支払機関では提出されたレセプトを一度審査し、審査終了後にそれぞれの保険者へレセプトを送ります。レセプトの審査は、もう一度保険者でも行われ、最終的な支払い金額が決定します。

 

■審査支払機関とは

審査支払機関は、保険医療機関が作成したレセプトの提出先であり、提出されたレセプトの審査と保険者への送付も行っています。また、保険者から保険医療機関に支払う医療費の支払い代行も担っていますので、最終的な決定金額は、この支払基金または国保連合会から医療機関へ入金されます。このように医療費の支払いは事務処理の迅速化を図るため第三者機関を通して「間接処理方式」がとられています。

 

■診療報酬の支払い

支払基金や国保連合会、保険者での審査を経て、医療機関に対する診療報酬の支払い額が決定しますが、場合によっては査定減点されることもあります。こうして決定した診療報酬(金額)は、診療月の2ヵ月後に医療機関に支払われるようになっています。

 

■診療報酬請求権の時効

保険医療機関における診療報酬請求権の時効については、令和2年3月診療分までは3年間、令和2年4月診療分からは原則5年間とされました。
なお、その起算日については、診療月の翌月1日とされています。

 

審査にて減点等をされてくる期間もこれに準じますので、診療してすぐには減点されずに認められていた内容も、しばらく経ってからさかのぼって減点されてくることもあります。

 

■レセプト提出後の流れ

支払基金または国保連合会へ提出したレセプトは、支払基金または国保連合会で一度審査を受けます。算定ルール上の事務的な内容と診療内容についての審査です。

その後、各保険者へと渡され保険者では資格有効等も含めて再度審査を行い決定金額が決まります。

 

■レセプトの審査

レセプトの審査(減点等)は2ヶ所で行われています。

 ①審査支払機関(支払基金または国保連合会)

 ②保険者

審査の結果、問題が無かった分については金額が確定し、支払いが行われます。問題があると思われるレセプトは、減点や返戻という処理が行われます。

・ 減点処理とは … 減点分を減らした点数で決定し、入金される。

・ 返戻処理とは … レセプト自体を返戻(返却)し、その分についての支払いは全く行われない

 

審査では、「突合点検」や「縦覧点検」も行っていますので、レセプト1枚だけを見て問題がなくても、連

月で見ると違和感が見つかるレセプトもあります。また、レセプトを電子請求している場合は、審査側に

算定している日にちが分かりますので、例えば週に1回などの決まりごとがある項目は、同じ週だから

(週がかわっていないので)減点されてしまうこともあります。医療機関でパソコンの画面や紙にプリント

アウトして点検を行っている場合には、気づかずに見落としてしまうこともありますのでご留意ください。

 

 

■医療機関での対応

減点処理で減点されたレセプトは、減点理由を明確にすることが大切です。傷病名の記載もれや、算定回数の誤りなど、明らかにと思われる内容でも、思い込みで間違った解釈をしていると、また同じように減点されてしまう可能性があります。場合によっては減点理由を審査支払機関に確認するなどして明確にすることが大切です。

また、減点に対して異議がある場合には、『再審査請求』を行うことができます。これは、レセプトを全く手直ししない状態で異議がある場合に、1回のみ認められています。(再再審査は認められません)

 

☆ 再審査請求    規定の 「再審査等請求書」に、請求内容が妥当適切であった旨等を含む必要事項

         を記入して、支払基金または国保連合会へ提出する。再度審査を受けた結果、「妥

         当適切である」と認められた場合は、減点分が復活し入金される。「原審通り」で

         認められなかった場合は文章での通知となる。

 

返戻処理でレセプトが返戻されてきた場合には、返戻付せんに返戻理由が記載されているので、その指示に従い、指摘箇所を訂正したり、詳記を記載(返戻付せんではなくレセプトに記載)したりして付せんもつけたまま再度提出をします。

 

■レセプト作成の大切さ

レセプトは、「これらの傷病名に対して、このような医療行為をしました」という診療報酬明細書です。しかし、実際には「このような医療行為を行ったので、これらの傷病名をつけました」という発想でレセプトを点検されている方は少なくないと思います。これだと整合性がなくなり、違和感のあるレセプトになってしまうこともありますので、審査側に目を付けられる可能性があります。レセプトは、医療機関の収入にも大きな関わりがありますので、審査で問題なく認めてもらえるようなレセプトを作成することはとても大切なことです。減点や返戻のないレセプト作成を目指してください。

 

**【参考】************************************************************************************************

 

「突合点検」と「縦覧点検」

 

●突合点検とは … 電子レセプトで請求された同一患者に係る同一診療(調剤)月において、医科レセプト

        と調剤レセプトを組み合わせて医科レセプトに記載された傷病名と調剤レセプトに記載

        された医薬品の適応、投与量及び投与日数の点検を行い、適正であるかを確認(審査)

        している。

 

≪要チェック!≫

   処方された薬剤に対しては必ず適応の傷病名をおつけください。

   突合点検で適応傷病名が無かった場合の薬剤料や調剤料などの減点は、実際に薬剤を

   渡した調剤薬局からではなく、処方を行った医療機関からになります。

 

●縦覧点検とは … 同一保険医療機関に係る同一患者において、当月分の医科レセプトと直近

                             6ヶ月分(保険者では1年以上の場合もある)の複数月レセプトを並べて点検し、

                                 診療行為(複数月に1回を限度として算定できる検査や、患者1人につき1回と

                                 定められている医療行為)の回数などの点検を行っている。

                             また同一診療年月、同一保険医療機関及び同一患者の入院レセプトと入院外レセプト

                                を組み合わせて、月1回の算定である検体検査判断料などの点検も行っている。

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