2011年8月12日

December  2010

Prefatory Note
社会医療法人 黎明会 事務局長 大江唯之 氏
診療所との連携が地域医療を支える

■戦略の中心は高齢化への対応

少子高齢化は、日本にとって社会構造の大変革を求め続けています。社会保障の世界にも、高齢者医療に加え、介護保険という新たな保険制度の創設を迫りました。医療関係者にとってもこの20年ほどは、年々、戦略の見直しを迫られているようです。

ところで、社会医療法人黎明会・北出病院が立地する御坊医療圏は、御坊市、日高町などを中心とする人口およそ7万人の医療圏ですが、その高齢化率は24%を上回る状況になっています。和歌山県自体が、和歌山市など一部の都市部を除くと、極めて高い高齢化率を示していますが、病院としてはこういった高齢化への対応、もしくは高齢化を意識した戦略を迫られてきたと感じています。

北出病院の歴史は、まさにこの高齢化への対応の歴史でもあります。昭和38年に北出胃腸病院への改称で実質的なスタートを切り、その後、病床規模を拡大し、法人も特定・特別医療法人から、昨年に社会医療法人となりました。この法人格の変遷は、一つには社会の公器としての病院の有り様を考えてのことですが、一方では、高齢化への積極的な対応のための環境整備とも言えます。

■超高齢化時代の病院の在り方

現在、黎明会では病院、老健、訪問看護やその他、介護関連サービス、健康増進施設など、特養を除くほとんどの機能・施設を整備しています。病院の病床も、一般病床(7:1)、療養病床、回復期リハ病床、亜急性期入院医療管理料、そして開放型病床といった陣容となっており、急性期から回復期、慢性期など多様な地域ニーズを考慮したものになっています。この中でも開放型病床は、病院の地域における戦略的な機能と考えています。

法人単体で、急性期医療から回復期、慢性期、介護、そして健康増進と、医療・介護・保健といった連続性の中で機能及び施設整備を行なってきましたが、2025年を頂点とする超高齢化した地域社会を支えるためには、在宅をどう戦略に組み込むかが重要になってくると考えています。

北出病院は、24時間365日救急体制で臨むことを掲げています。これは限りなく地域に密着した病院であり続けることを宣言したものですが、地域の高齢化が進めば進むほど、こういった「常時臨戦態勢」は重要な機能となるはずです。その際、法人における医療機能は、アウトリーチとして訪問診療を中心とした在宅医療までをカバーするというのが理想かもしれませんが、極めて非効率な提供体制と言わざるを得ません。

そこで、地域の診療所と連携を強化し、地域を面で支える体制作りが求められると考えています。まだまだ登録医は限られていますが、開放型病床だけでなく、PACSはじめ地域の診療所の利便性を高め、連携をどう強化していくかが今後の課題でもありますし、必ず乗り越えられると信じています。

(文責 編集部)

コンサルタントの独り言

以前であれば電子カルテに適さないと言われていた診療科目の先生からも、電子カルテの導入を検討したいというご相談を頂くことが多くなりました。これも、電子機器の発達やメーカーさんの日々の努力が実を結んでいるのでしょう。確かに、操作方法の改善や機械の能力自体が向上したことで入力の負担が減っていると思います。

ただ、周りの先生方が導入をすすめるからというだけで導入するよりも、実際に複数の電子カルテを操作して慎重に決めていただければと思います。やはり高額なシステムですし、一度導入すると変更するのは難しいですから。

さて、私ごとですが最近流行のスマートフォンを購入しました!正直流行に流された感じですが、幸い機能には満足しています。もう流行も下火?のTwitterも始めてしまいました。恥ずかしくて名前は明かせませんが、日々の記録としても残るので重宝しています。もし、発見されたらお気軽に声をかけてください。

東京本社
コンサルティング部
親泊和礼

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Directors Interview
美しが丘メンタルクリニック 院長 児島一樹 氏
企業経営者の参謀にもなり得る診療内科でありたい

渋谷から東急田園都市線急行で19分、「たまプラーザ」は、昔日の丘陵の優美さから名づけられた美しが丘の町名を映し、桜や花見月の街路樹が織り成す美しい街並みが印象的な地域。大型のショッピングセンターの他、各種専門店、評判のグルメスポットなど商業施設も充実し、若々しい活気に溢れた、沿線でも特に人気の高いエリアだ。『美しが丘メンタルクリニック』は平成17年、駅から徒歩3分の好立地を得て開業した。

■地域特性から患者層を想定

-まず、開業を決意されたきっかけからお聞かせください。

大学を卒業後、岐阜の病院に約10年間勤務し、その間に、ビジネススクールでMBAの内容を学びました。その後タイ王国のバンコク病院に勤務しました。医療コーディネーターとして海外駐在員に接し、医療相談をしながら、マーケティングも勉強しました。その成果を本来は勤務医として発揮したかったのですが、現実的にはトップに立たない限り、大きな病院組織の中ではうまく活かすことができません。だったら、開業して自分のスタイルで納得のいく医療と経営を実現したいと思いました。

-開業に際し特にこだわったコンセプトは。

企業のオーナーや経営幹部が多く住む地域特性から、アッパー層に向けて、空間環境的なアプローチにもこだわった医療の提供をしたいと考えました。日本の保険医療制度の中では困難ですが、高くても良質で高度な医療サービスを、という海外に倣った意識も根底にはあります。同時に、英語とタイ語のコミュニケーション力を活かして、外国人の患者さんも積極的に受け入れたいと考えました。

-そのコンセプトは開業後も貫かれていますか。

患者さんの幅はもちろん広いのですが、ほぼ想定した層がコアを形成しています。横浜のクリニックでは稀ですが予約料をいただいておりますので、患者さんの立場からは多少限定感があるのかもしれません。あとは、ホームページを見て来院なさる外国人の患者さんが多いですね。国の数では20カ国位でしょうか。遠方では新潟から通院される英国人の患者さんもいます。タイや米国などの異文化の中での医療を通した人との交流は勉強になりましたし、サービスに十分活かされていると思います。

■自分でできることは自分自身で手掛ける

-開業を実現するうえで、医業総研のサポートは納得のいくものでしたか。

コンサルティングを依頼する際の希望は、自分がこだわり、できることは自分自身でやり、煩雑な手続きなど不得手な部分は全面的にお任せしたい、というものでした。立地の選定、クリニックの設計や演出、スタッフの人選、ホームページの作成等は、私自身で納得いくまで手掛けたかったのです。しかし、他のコンサル会社は開業に関わるすべてを任せることが条件と言われ、不透明で懐疑的なイメージがありました。医業総研は勤務医時代に取引のあった会社の紹介だったのですが、医師の自由度が高く、透明性もあり信頼のおけるものでした。明確な役割分担の中で、気持ちよく開業に向かうことができました。

-医療施設を感じさせない、素晴らしい空間ですね。

待ち時間も心身のリラックスに変えるクリニックでありたいという思いから、リゾート&スパを意識しました。開業前に設計士が同行したのも含め5回ほどタイに出向いて、リゾート&スパのホスピタリティを体感し、家具や調度品なども現地で直接買い付けました。アロマ効果の高いエッセンシャルオイルやヒーリング系のBGM、スタッフの接遇もコンセプトに適ったものです。

-開業から約5年が経ちました。今後目指される方向は。

企業経営者の多くが孤独な環境で日々様々なストレスを抱えています。それを癒すのは僧侶か占い師か、はたまた銀座のママか (笑)。しかし悩みに対して直接的な結論を出すのが医療ではありません。患者さんのメンタリティを整え、本来のポテンシャルを発揮できる方向に導くことが大切と考えます。可能であれば、自由診療で夜間など時間的な制約を意識せずに、じっくりと患者さんの声に耳を傾けた医療サービスを実現したい。さらには、会社経営に関わる具体的な相談にも応じられる、ある意味のプライベートな経営参謀でもありたいと思います。

-ありがとうございました。

<<美しが丘メンタルクリニック>>
診療科目…心療内科
住所…横浜市青葉区美しが丘 1-9-16-201
TEL…045-909-0220 begin_of_the_skype_highlighting            045-909-0220      end_of_the_skype_highlighting
URL…http://www.utsukushi.net/

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新連載 女性医師開業のススメ

都内S区で小児科クリニックを開業した女性医師のI先生。国立大学医学部を主席で卒業後、神奈川県の大学医学部付属病院に入局。その後も複数の病院勤務で研鑽を積まれた小児医療のエキスパートです。

しかし、幼児の長子の下に二人目のお子さんを出産したことで、常勤勤務医を続けるのが困難になりました。常勤では子どもの病時に欠勤できませんし、遠方通勤では保育園の送迎時間に間に合いません。一般企業に勤務するご主人に、平日の協力を仰ぐことも不可能です。已むなく、I先生は午前中のみ外来診療を行うパート医として勤務を続けてきましたが、これでは患者さんとじっくり向き合う、納得のいく医療が達成できません。そこで、I先生は開業医の道を目指すこととなります。

■理想の開業より健全な経営を優先

開業にあたり、当初I先生が理想としていた形態は、実家に近い都内城南エリアでの職住一体の戸建て開業でした。実家のサポートが期待でき、しかも子どもたちが目の行き届く範囲に居ることで、安心して診療に打ち込めると考えたのです。なるほど、その条件を満たせば、ご家族も安心でしょうし、理想的な開業スタイルのように思われます。I先生の意向を受け、私ども日本医業総研との、二人三脚の開業準備がスタートしました。

I先生の希望される城南4区は、都内でも有数の高感度エリアで、生活動線に面した地価は坪単価200万円が普通の地域です。まずこの条件下で、事業計画を作成し、シミュレーションを重ねた結果、コンサルタントの判断として開業は厳しいという結論になりました。予測される収入に対して、土地の購入を伴う金融機関からの借入れ比率が高く、金利が経営を圧迫することを懸念したのです。その旨をI先生も理解し、マーケティングを優先したエリアでのテナント開業へと切り替えました。

小児科のマーケティングは、診療圏調査の中でも特殊な分野といえます。競合調査は当然のこと、年少人口と児童数の過去 年間の推移を調査し、ニーズの有無と成長性を分析。その上で、住民の居住形態などを加味することが必要になります。今回は、最終的に3つのエリアに可能性を見出し、コンサルタントが沿線各駅に足を運び一カ所に絞込み、条件交渉のすえに物件を決定。I先生の自宅と実家にも近いという利便性をクリアした場所での開業です。

■母親の視点に立った診療所造り

さて、クリニックの造りには、母親視点に立った女性医師らしい気遣いが随所に活かされました。子どもの緊張感を和らげるインテリアだけでなく、病児と健康児を入口から待合室、診察室、化粧室に至るまで分離し病原体感染のリスクを軽減するなど患者さんと、親御さん本位の工夫が施されているのも特徴的です。開業前内覧会には300人以上の方が参加し、地域の期待の高さが伺えました。

■診療所開業をライフスタイルに

開業から約1年。現在は一日平均60人の患者を受け入れ、土曜日も終日診察を行うまでになったI先生。早朝5時から朝食、お弁当、夕食を作り、子どもたちを幼稚園と保育園に送ります。一日の診療を終えると、車を運転し、シッターに預けた長子を迎えた後、第二子を迎えに保育園へ行き、家路につく毎日。勤務医とはまた異なる忙しさも然ることながら、医療にも経営にも責任を負うのが院長です。しかし、そのプレッシャーを、ライフスタイルに変え、やりがいのある仕事を楽しんでいるようにも見えるI先生に女性医師のひとつの生き方が感じとれます。

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Topic!
増患対策集中講座開催のお知らせ

日本医業総研・東京本社では、医院経営塾の特別講座として増患対策集中講座を開催します。概要は以下の通りです。

【日時】

12月5日(日)、10時30分~14時30分(昼食休憩含む)

【会場】

東京国際フォーラム G504会議室

【第1部】

《患者の求める医療サービス》
~こんなクリニックがあったらいいな~
「内容」
患者はクリニックをどう探すのか、どう評価するのか、どう伝えるのか、患者の求める医師、患者の求めるクリニックとは、「あったらいいな」の実現に向けて
「講師」
和田ちひろ氏(患者支援団体いいなステーション代表、厚労省医療施設体系のあり方に関する検討会委員他)

【第2部】

《差別化できる院内体制の作り方》
~事例に基づく院内サービス向上~
「講師」
植村智之(日本医業総研シニアマネージャー)

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勤務医のための医院経営塾 Part7
第2講『資金計画集中講座III』

前号の続きで今号は、初期投資についてご紹介していきます。「開業するまでに一体いくらかかるのか?」こうしたご相談は開業を検討中の先生から非常に多くいただきます。ここでは、資金計画条件シートの開業時貸借対照表に基づき、一つひとつの項目について説明していきます。

まず、開業にあたって大きな投資となる建築関係費(内装設備工事含む)です。レントゲン設備を入れる場合、入れない場合、工事面積、戸建ての場合は木造か鉄骨、もしくは鉄筋コンクリートなど、それぞれの状況に応じた工事坪単価を示し、前半でお考えいただいたクリニックの面積を掛け算して、先生方の開業イメージに合うものを準備するのにいくらかかるか、電卓を叩いて計算していただきます。また、医療機器については、機器の種類ごとのおおよその投資額を示して、先生方が導入を考えておられるものを選択し、投資額を算定していただきます。また、前半で確認したテナント賃料に基づき保証金を算出していただき、資金計画条件シートにまとめていただきます。その他の開業当初ご準備される医薬品診療材料、開業前広告費など一般的にかかる費用はあらかじめ設定した数字を記載していますので、大きな金額については、これで準備完了となります。

そして、その合計額に必要な資金調達方法をご説明し、実際に開業するにあたって、自己資金でいくら、政府系金融機関、民間金融機関、ファイナンス会社からそれぞれいくら調達するかを検討していただきます。ここで出た数字は、先生方にとっては、今まで想像していた数字より大きくなることが多く、開業への現実味が帯びてきて、慎重かつ綿密な開業準備、資金計画の必要性に気づいていただいています。

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