皆さんこんにちは。今回は、腫瘍マーカー検査を行ったときの算定について解説します。
腫瘍マーカー検査は血液や尿で行うがんの検査です。がん細胞が体内にあることを示す目印(マーカー)となる物質が血液や尿に含まれているかを調べることで、がんの存在や量などが分かるようです。
■同じ検査でも傷病名によって異なります
腫瘍マーカー検査を行ったときの算定は、2通りあります。同じ検査を行っても点数は異なる場合がありますので注意が必要です。
算定の違いは傷病名です。がんであると確定している患者と、がんの疑いの患者とで異なりますので、カルテからは傷病名の違いで見分けてください。
■がんであると確定している場合
腫瘍マーカーは、検体検査で生化学的検査(II)の区分になります。行っているのは血液(または尿)検査ですが、がんが確定している患者の場合は検査料では算定しません。診療識別コード番号(13)医学管理等の「B001 3 悪性腫瘍特異物質治療管理料」で算定します。
がんの状態を確認した上で、今後の治療方針を考え、管理を行っていくことを評価した点数になります。
■管理料での算定は
「悪性腫瘍特異物質治療管理料」の算定は、3通りの点数があります。
腫瘍マーカーの項目の、
イ、尿中BTA だけを行った場合は 220点
ロ、尿中BTA 以外の検査項目を 1項目のみ行った場合は 360点
尿中BTA 以外の検査項目を 2項目以上行った場合は 400点
※尿中BTAと尿中BTA以外の項目を同時に検査した場合は、尿中BTA以外の項目数のみを数えて算定します。
■管理料で算定したときの初回月加算
管理料で算定する場合に、「初回月加算 150点」という加算点数があります。初回月は適切な治療や管理を行うために多くの項目を検査することが予測されることから設定された項目です。算定は、ロの360点または400点を算定する場合に限り、初回月だけ加算することが認められています。(イに加算することはできません)
他院でがんが確定している患者が転院してきた場合でも医療機関ごとに腫瘍マーカー検査を行った初回月の1回だけは加算ができます。
しかしこの初回月加算は、管理料で算定する初回月であっても、加算ができない場合もありますので気をつけてください。
■初回月加算ができない場合
悪性腫瘍特異物質治療管理料を初めて算定する初回月に限り、ロの点数に加算ができますが、その「前月に腫瘍マーカーの検査料を算定していたら初回月加算は算定できない」というルールになっています。ここでのポイントは、前月とは暦月で1ヶ月前のことだけを指しています。
たとえば、4月に初めて悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定する場合は、その前の3月に腫瘍マーカーの検査料を算定していたら加算はできないということです。ですが、2月には腫瘍マーカー検査を行っていたけれど、3月には腫瘍マーカー検査は行わなかったという場合は、4月に初めて管理料を算定する際に加算ができます。
■がんの疑いの場合
がんの疑いの患者の場合は、まだがんかどうかは分かっていないので、検査を実施したことにより(60)検査料で算定します。
■検査料での算定は
検査料で算定する場合は、検査料 + 検体採取料 + 判断料 で算定します。
●検査料は検査を実施した都度算定できます。
検査料は、腫瘍マーカーの場合、各項目ごとに点数は決まっていますが、まるめ算定にもなっていますので、2項目で230点、3項目で290点、4項目以上で396点です。(尿中BTAは除く。尿中BTAは、単独で80点になります)
●検体採取料は、検体(検査をする物)を採取する技術料を評価した点数です。患者が自分で採取できる場合には算定できませんので、必要なときには点数表等で「診断穿刺・検体採取料」のところを確認して算定します。
採取料は、血液が検体になりますので、静脈からの採血料37点(6歳以上)が算定できます。(検体は一部に尿の場合もあります。尿の場合は採取料は何も算定できません)
●判断料は、検査料と同様に7つの区分に分かれています。実施した検査の区分の判断料を暦月で1回のみ算定できます。
判断料は、生化学的検査(Ⅱ)144点になります。
■同じ月に両方は算定できません
同一月に「腫瘍マーカー検査料」と、「悪性腫瘍特異物質治療管理料」の両方を算定することはできません。
たとえば、今日は「がんの疑い」で検査を行い、その結果からがんであることが分かった場合の今日の算定は、検査料になります。検査を行う時点で、がんが確定しているか、がんの疑いかで判断してください。
そして同一月に再び腫瘍マーカー検査を行ったとしても、悪性腫瘍特異物質治療管理料は算定できませんのでご留意ください。
(「同一月に腫瘍マーカー検査を2回以上行った場合でも、それに係る費用は別に算定できない」とされています)
■初診の患者さま
初診の患者さまでも、がんであることが分かっている場合には初診時から管理料で算定することができます。(初診時に腫瘍マーカー検査を実施した場合)
また、がんの手術後の患者さまの場合も、その後の経過観察になりますので管理料で算定します。転移性のがん疑いで検査をした場合も管理料で算定しますが、原発性のがん疑いの場合は検査料での算定になります。
このように同じ検査を行っても病名によって算定点数が異なる場合がありますので、検査のオーダーの仕方や電子カルテへの入力の仕方にも注意が必要と思われます。
■ルールです
点数表で、「主たるもののみ算定する」と書かれているときには点数が高くなる方を選ぶことができますが、今回の場合は患者のカルテをみて病名から判断することになりますので、点数が高くなる方を選ぶことはできません。管理料で算定する方が点数は低くなることもありますが、それでも病名で判断するというルールですので正しく算定するようにしてください。
■大切です
悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定した同日は、腫瘍マーカー検査以外の血液検査を行っていても、静脈からの血液採取料は算定できませんのでご留意ください。
カルテの記載も大切です。悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定したときには、腫瘍マーカーの検査結果及び治療計画の要点を診療録に添付又は記載することと定められています。
■参考までに
保険で認められる腫瘍マーカー検査の主な項目(抜粋)
肺 腺がん | CEA ・ SLX |
肺 扁平上皮がん | SCC ・ シフラ |
小細胞肺がん | NSE ・ ProGRP |
乳がん | CEA ・ CA15-3 ・ 抗p53抗体 |
食道がん | CEA ・ SCC ・ TPA ・抗p53抗体 |
胃がん | CEA ・ CA19-9 ・ STN |
大腸がん | CEA ・ CA19-9 ・ 抗p53抗体 |
肝臓がん | AFP ・ PIVKA-II |
胆道(胆のう・胆管)がん | CEA ・ CA19-9 ・ DUPAN-2 |
膵臓がん | CEA ・ CA19-9 ・ DUPAN-2 ・ エラスターゼ1 |
膀胱がん | CEA ・ TPA ・ NMP22(尿) |
前立腺がん | PSA ・ γ-Sm |
卵巣がん | CA125 ・ SLX ・ HE4 |
子宮頸がん | CEA ・ SCC |